表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された勇者は、実は異世界の魔王だった件。  作者: 2401
第一章 勇者召喚される
5/38

第一章 勇者召喚される3

「まったく、ワイズ様は……」

「だから、あれは不可抗力で――」

「知りません!」


 ――ラッキーメロン事件から数刻。

 とりあえず勇者衣装に着替えた俺は、まだ怒りが収まっていないらしいマリアと対峙していた。


「だいたい、あれはマリアが俺の服を脱がそうとするから」

「私は良いんです。そういう契約ですから」


 いつから主従契約になったのか。すっかり主様気分のマリア。

 まあ、あながち間違いではないから強く出づらい。


「もうこの話しはお終いです。あと、これもワイズ様の借りですからね」

「はぁ!? ちょっと待てくれ」

「待ちません……」


 本日、二度目の押し付け詐欺にあってしまった。まあ、今回はギブ&テイクということにしておこう。俺にも良いことはあった。負けるな……俺。


「それではワイズ様。今から式典会場へ向かいます」

「おう、分かった。さっさと終わらせようぜ」


 こんな下らない茶番はさっさと終わらせるに限る。

 そう思い部屋を出ようとした俺を引き止めるマリア。


「待ってください」

「なんだよ。まだ何かあるのか?」

「あります。とても大事なことです」


 そう言って、姿見のある場所まで俺を連れていくマリア。


「鏡なんか見てどうするんだ。服ならちゃんと着てるだろ……」


 鏡に映る全身真っ白な自分の姿を見ていると、急に悪寒が走った。やっぱりこの服のセンスはないな。と、改めて思いしらされた。


「衣装は問題ありません……良くお似合いです」


 ――嘘付け!


「お世辞は良い。早く用件を言ってくれ」

「お世辞ではないのですがぁ……」


 小さな声で何かを呟いたマリア。なんて言ったんだ?

 と、聞き返す前にマリアが喋り出したので、その機会を逃してしまう。


「実はワイズ様の見た目に問題がありまして……」

「見た目……ああ、そういう事か」


 鏡に映る自分の姿を見ていて気が付いた。俺が魔族であることを……。

 服装ばかりに気を取られていて忘れていたが、俺の見た目は魔族そのもの。

 人前に出るというのに、頭に生えた角やこの魔族特有の赤い瞳を隠さないのはまずい。

 その事に気がついた俺の様子を見計らい、マリアが声を掛けて来る。


「お気付きの通り、その角や瞳の色に問題があります。ですから、ワイズ様には変装して頂く事にしました。直ぐに変装道具をお持ち致しますので、少々お待ちください」


 そう言ってマリアは机に置いてある、変装道具が入っているであろう鞄を取りに行く。

 だが、俺はその行動を止めた。


「……待て。その必要はない」

「どういうことですか?」


 足を止めたマリアは、こちらに向き直る。 


「なに、簡単なことだ」


 俺は右手を天に掲げた。そして、



 ――パチンッ! と指を鳴らす。すると、



「ワイズ……様?」

「どうだ、これが魔王の実力だ!」


 俺の姿を見て驚いている様子のマリア。

 それもそのはず。俺は魔法で人間に変化したのだ。

 鏡に映る俺の頭には角はなく、髪の色も白髪から黒髪に変わっている。


「す、凄いです! 詠唱もなく、ましてや使用する魔法の名前すら唱えていない。それで魔法が発動するなんて、さすがは腐っても元・魔王ですね」

「そうだろ、そうだろ――って、最後の奴は余計だろ!」


 まったく、誰が腐ってるだ。それに、元じゃなくて現在進行形で魔王だから。

 とことん、俺を魔王から引き離したいらしい。

 どうにも締まらない結果に納得がいかない俺を他所に、マリアは疑問を投げ掛けて来る。


「あれ……でも、瞳は赤いままですよ?」

「――ギクッ!」

「ギク、じゃありません! まったく、元・魔王は……」


 と、ぶつくさ文句を言いながら鞄を取りに行くマリア。

 いや、俺だって完璧に変化したい。でも、昔からこうなのだ。

 何度やっても、瞳の色だけは変えられなかった。

 いったい、何が原因なのか皆目見当もつかん。


「こちらをどうぞ。見栄っ張りの元・魔王様」

「……くっ。見栄っ張りも、元も余計だ!」


 鞄から取り出した眼鏡ケースらしきモノを、嫌味たっぷりで手渡してくるマリア。

 そのケースを渋々受け取る。


「それで、このケースは何だ?」

「開けてみてください」


 言われるがままにケースを開けてみる。


「眼鏡だな」

「眼鏡です」


 中には当然のように眼鏡が入っていた。こいつでどうしろと?


「いや、眼鏡なのは見れば分かる。俺が聞きたいのは、こいつを渡した意味だ!」

「眼鏡ですから、掛けてみてはいかがですか?」


 いちいち回りくどい奴だ。結果だけを教えれば良いものを。

 きっと、その過程を見て楽しんでいるに違いない。つくづく食えないお姫様だ……。

 文句を言っても始まらないので、おとなしく眼鏡を掛けてみる。すると、



「――黒くなった!」



 何度挑戦しても変わらなかった瞳の色が、眼鏡を掛けただけで変わったのだ。

 なんとも言えない敗北感に打ちのめされた。


「どうですかこの眼鏡。レンズに特殊な魔力が込められていて、瞳の色を変色させる効果があるんです」

「……まあ、悪くない」


 鏡に映る自分の姿に少し違和感を覚えたが、今は感動が勝っていた。


「それは良かったです。眼鏡を掛けられたワイズ様も素敵ですよ」


 満面の笑みをこちらに向けるマリア。これであの性格じゃなければ完璧なのに……。

 いや、そんなことを考えている場合ではない。これで条件はクリアできた。

 あとは式典とやらを適当にこなすだけ。その後は、まあ……なるようになるだろう。


「さあ、準備は整いました。ですが、くれぐれも異世界の魔王だということは内密にしてくださいね。最悪、ワイズ様を失ってしまうことにもなりかねませんので……」

「それ、マジで言ってる?」

「……冗談ですよ」


 何、その間……。

 本当に冗談なんだよな。信じていいんだよな。


「……うっ、胃が痛くなってきた」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ