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召喚された勇者は、実は異世界の魔王だった件。  作者: 2401
第一章 勇者召喚される
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第一章 勇者召喚される2

 グランソード王国、王城内にある客室。

 部屋の中央にはソファーとテーブルが置かれており、端々には本棚や姿見、仮眠用のベッドといった家具が見受けられる。特に変わったモノはない普通の客室だ。

 マリアは準備があるからと、俺をここに残して部屋から出て行った。

 仕方がないので、俺は部屋に置かれているソファーに座り、マリアが戻って来るのを待っていた。


「さて、どうしたもんかねぇ~……」


 暇を持て余していた俺は、ここまでの出来事を整理する事に決めた。ここに来る道中、マリアから様々な情報も得ている事だしな。


 まず最初に思った事だが……ここは何処なのか。

 そんな基本的な事すら分かっていなかったのだ。

 マリアの話しによると、俺は現在グランソード王国の王都、アーリスという場所の王城内に居るという。俺が召喚されたやけに薄暗い場所も、王城の地下にある祭壇部屋という特別な儀式を行う場所らしい。

 それから、もう一つ気になる事がある。

 瀕死の状態だった俺をどうやって治療したのか……。

 死にかけている者を傷一つない正常な状態に治すなど、奇跡に等しい所業だ。そんな俺の疑問に対して「私、回復魔法だけは得意なんです。死んでいないければ、どんな状態でも治してみせますよ」と、得意げに語ってくれたマリアを思い出す。

 改めて彼女が底知れない人物だと再認識させられた瞬間だった。と、まあこんなものか。

 ある程度整理が出来たところで、丁度客室の扉が開く音がした。


「ワイズ様、お待たせ致しました」


 扉の向こうから現れたのは、白く輝く衣装を手に持つマリアだった。

 ご機嫌な様子のマリアは、俺の座っているソファーの近くまでやって来ると、その衣装を俺に見せつける。


「こちらがワイズ様の勇者衣装です」

「却下だ……魔王がそんな服着られるか」


 いかにも勇者ですと言わんばかりの全身真っ白な衣装。これはない……絶対ない。

 嫌がる俺に、呆れたような反応を示すマリア。


「……はぁー。まだそんなことをおっしゃっているのですか? いいですか。ワイズ様が魔王だったのは昔の話です。今はこの世界を救う勇者様なのです! その自覚をしっかり持ってください」


 いや、絶賛好評魔王中のつもりなんですがね……。

 なんてことは口が裂けても言えない。マリアを敵に回すのは分が悪い。

 契約時に散々味わった辱めが脳裏をよぎる。


「はいはい、わかりました。着れば良いんだろ、着れば……その勇者衣装とやらを」


 あんな思いをするのは二度と御免だ。ここは、素直に従っておこう。

 たかだか、服を着るだけのこと。造作もない……。

 そう覚悟を決めていると、なぜか機嫌を悪くしたマリアが冷ややかな視線を送って来る。


「……その態度は頂けませんが、今は不問と致しましょう」


 心臓を鷲掴みにされた気分だ……。


「では、早速お着替えと参りましょう!」

「……お、おう」


 氷のような冷たい表情から一変。急にご機嫌なマリア。

 こいつの精神回路はどうなってるんだ?

 ますます人間離れしていくマリアに恐怖を感じた俺は、直ぐに着替えを始めようとする。

 だが、マリアが居るので着替えられないことに気付き声を掛ける。


「おい、着替えるから出て行ってくれないか」


 さすがに、うら若き乙女の前で裸になるのは恥ずかしい。それに、何か言われたら立ち直れそうにない……。

 そんな俺の心情を汲み取ることもせず、マリアはここから微動だにしない。

 それどころか、こんなことを言い出し始めた。


「何をおっしゃっているのですか?」

「いや、着替えるから部屋から出て行ってほしいな~と」

「ダメです!」


 ……はあ?

 

「なんでだよ! お前が居ると着替えられないだろ!」

「そんなことはありません。私がお手伝い致します」


 どんどんこちらに詰め寄ってくるマリア。

 突然何を言い出すんだ、このいかれお姫様は……。


「要らん。これくらい一人で出来る」

「ダメです!」

「いや、こっちがダメだから」

「知りません! いいから、そのボロ布を脱いでください!」


 大事なモノだと思われる勇者衣装を放り投げ、俺の服を引き剥がしにかかるマリア。


「――や、やめろぉ! 放せッ!」

「無理です! ダメです! ありえませんッ!!」


 もみくちゃの攻防を繰り広げる中、否定の言葉を羅列するマリア。それはこっちのセリフだ。と、ツッコんでやりたい気持ちを抑えながらマリアに抵抗する。

 そして、突然それは起こった。

 しつこいマリアの手を振り解こうとした時、俺の右手にふわっと柔らかい感触が伝わる。


「……ん、何だこれ?」


 柔らかいモノの正体を探るべく、右手を動かす。すると――



「――キャっ!」



 と、可愛い悲鳴が漏れた。その声の主は、勿論マリアのモノだ。

 そして、鐘が鳴る……人生終了の合図を知らせる鐘だ。


「……………………」


 無言でふるふる震えているマリア。目には涙を浮かべている。

 察しの良い奴ならわかるだろうが、俺の右手にはマリアの大きなメロンが収まっていた。


「す、すま――」

「――ワイズ様の……エッチィィ―――――!!」

「ブベラぁッ!!」


 マリアの右手から放れた全力のビンタが、俺の頬に打ち付けられた。

 その威力は強烈で、俺の体はぶっ飛び客室の壁にブチ当たった。


「――何事ですか!?」


 あまりの衝撃音に、客室の外で待機していた兵士たちが慌てて中に入って来た。

 そして、室内の悲惨な状況を確認すると、ぼそっと呟いた。


「……本当に何事ですか!?」


 この状況に理解が及ばないらしい兵士達は、ただ困惑していた。

 俺は生涯忘れないだろう。この素敵な初めての体験を……。

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