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召喚された勇者は、実は異世界の魔王だった件。  作者: 2401
第三章 勇者潜入する
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第三章 勇者潜入する10-2

「……何ッ!? それは本当なのか?」


 巨大なゴブリンは、一先ず俺達に向けていた矛先を収め、倒れているカール達の下へ歩き出した。


「……突然、どうしたんでしょうか?」

「分からん。だが、警戒は解くなよ。いつ攻撃が再開されてもおかしくない状況だ」

「そ、そうですねぇ……」


 巨大なゴブリンとカール達のやり取りを遠くから観察しながら状況を整理する。

 気絶していた筈のケネスは、俺達がやられる直前に巨大なゴブリンに『テレパシー』で待ったを掛けた。なぜそんな事をする必要があったのか? まさか、俺達を助ける為にそんな事を……いや、結論を出すのは早計か。

 それにあの巨大なゴブリンだが、奴こそカール達の言っていたキングという奴に違いない。ここのゴブリン達を束ねるボス……やはり、凄い力を持っていやがる。

 あの力に対抗するには、魔族化は必須……。

 そう考えていた時である。キングがカール達との会話を終え、こちらに向き直った。


「おい、お前たち……」


 キングは俺達に声を掛けた。


「……何だ?」


 その声に俺が答えた。すると、



「――本当に、すまなかったぁぁああああああああああ!!!!」



 キングは急に膝をつき、頭を地面にこすりつけ出した。いわゆる土下座という奴だ……。

 その巨体から繰り出された土下座は凄まじく、衝撃で地面が揺れる。


「うおっ!」

「ひぃ!」


 急な土下座にびっくりしたが、それよりも地震のような揺れに耐えるので精一杯だった。

 俺はなんとかバランスを取る事で立っていられたが、アリサは早々に「あいたッ!」と声を上げ、尻餅をついていた。その姿がなんとも愛らしかったのだが、今はそれどころではない。


「おい! 意味不明な土下座は止めて、きちんと説明しろぉ!!」

「おお、すまなかった。我輩とした事が、つい感情が先に出てしまった」


 俺が抗議の声を上げると、キングは土下座を止めてこちらに向き直った。


「本当にすまなかったな、小僧達。我輩はてっきり、お前達が我輩の可愛い部下達を殺したモノと思っておった。しかし、カールとケネスから事情を聞き、全て理解した。この騒動の元凶は、我が側近ライネスによる謀略だったと……」


 あの偉そうなゴブリンか……やはり、奴が何か企んでいたんだな。


「我輩の側近ライネスは、知略に長けるゴブリンエリート。大方、我輩のやり方に着いて行けなくなった奴は、カール達を使って人間達を誘き出し、我輩を殺させるつもりだったのだろう」


 キングが語るライネスの謀略は、どうにも俺の中で上手く消化出来ずにいた。

 カール達が誘拐を行っていたのは知っている。それがライネスの命令によるモノだった事も今の説明で理解出来た。だが、どうしても分からない事がある。


「……ちょっといいか」

「……んっ、どうした?」


 キングの話しに待ったを掛けた俺は、そのどうしても分からない事を質問した。


「なぜライネスはお前を裏切ったんだ? それに、お前の言うやり方って……お前はいったい何をしようとしてるんだ?」


 俺の推測が正しければ、こいつらは人間達に危害を加えるような存在ではない筈……それを証明する為にも、キングのやろうとしている事を明らかにする必要がある。


「そうだな……もう時は迫っている。我輩の可愛い部下達を殺さず、こうして我輩の話しを何の疑いもなく聞いてくれるお前たちになら、全てを打ち明けても良いだろう」


 何か気になる事を言っていたが、今はそれどころではない。

 キングは辛そうな表情を浮かべながら語り始めた。


「……我輩は、魔王軍の四天王だった。まあ、元魔王軍だがな……」

「ちょっと待ってくれ!」

「何だ、まだ話し始めたばかりだというのに……」


 俺の待ったに不快感を示すキング。いや、そんな顔されてもな……。


「それは悪かった。だが、どうしても確認したい事がある……『元魔王軍』って、何だ?」


 どんな話しが聞けるのかと思っていたら、いきなり俺の知らないワードが出て来てびっくりした。『元魔王軍』って、どういう事だよ。そんなの聞いていないぞ……。

 そんな俺の問いに対して、キングはうっかりしていた。という表情を浮かべて話し始めた。


「人間達は知らなかったのだな、魔王軍が二つの勢力に分かれてるという事を……」


 キングが語った魔王軍の内部事情。だが、二つに分かれるとは、どういう意味だ……?


「魔王軍は、我輩を含めた元魔王軍四天王が率いる『元魔王軍』、そして、魔王様を暗殺して現魔王の地位に着いた新魔王率いる『新生魔王軍』の二つに分かれているのだ」


 そんな複雑な事になっているとは知らなかった。


「おい、お前も知らなかったのか?」

「……し、知らないわよ……そんな事……」


 『ドレイン・ダイン』の影響でまだ魔力が回復していないエレナは、地面で横になりながら答えた。エレナが知らないという事は、マリア達も知らない筈……いったい、どうなってやがる?

 この衝撃的な事実にはさらに続きがあり、


「我輩達『元魔王軍』は、殺された魔王様が残された言葉を守り、人間達を『新生魔王軍』の脅威から守ってきた。だが、それも限界を迎えていた……」

「――いや、ちょっと待ってくれ!! さっきから、俺達の知らない事がどんどん出て来て、頭がパンクしそうだ!! ……一旦、整理させてくれッ!!」

「……分かった」


 話しを続けようとするキングにストップを掛け、俺達は話し合いの時間を設けた。



「おい、あいつの言ってることは本当だと思うか?」

「……そんなの……嘘に決まってるでしょ!」


 頭ごなしに嘘だと決めつけるエレナ。


「本当に嘘なんでしょうかぁ? 私には、そうは見えませんがぁ……」

「……俺もアリサの意見に賛成だ。あいつの言ってることは、今までのカール達の行動、言動が全て裏付けている。エレナがカール達を攻撃した時、奴らは反撃してこなかったし、アリサが捕まっていた時も、傷一つ付けられてはいなかった。そして何より、奴らはライネスの『殺せ』という命令に従わなかった。全部を信じろ。と言うのは難しいだろうが、これだけの証拠を見せつけられれば、一定の信頼を置いても良い相手と、判断出来るんじゃないか?」


 今まで自分が立てていた仮説を真実と確信し、エレナ達に話した。


「……ワイズさん、凄いですぅ。私が思っていた事を、全部言葉にしちゃいましたぁ~」


 俺の説明に感嘆の声を上げるアリサ。その一方、エレナは不服そうに口を開いた。


「あんたの言ってる事は……理解出来るわ……でも、あたしは……信じない……魔族は全部……敵よッ…………!」


 そう吐き捨てたエレナは、何がしたいのか、よろよろの状態で立ち上がり始めた。


「お、おい、無茶するな!」

「そ、そうですよ、エレナさんッ!」


 俺とアリサの制止も聞かず、エレナは立ち上がった。だが、直ぐに倒れそうになる。


「エレナさんッ!」


 よろけるエレナを支えるアリサ。そして――、


「……このあたしを……きちんと、納得させてみなさいッ! ……それが出来なければ、あたしは問答無用で、こいつらを殺す! そして、あんたも殺すッ! それがあたしの正義だから……」


 そう言って、俺を睨みつけるエレナ。


「……分かった。お前を納得させる答えを必ず見つける。だから、それまでこの件は保留にして欲しい」


 エレナが本気なのを理解した俺は、新たな課題に挑戦する事になってしまった。

 なぜ、エレナはそこまで魔族を憎むのか。俺やアリサと出会った事で、少しは緩和されたと思っていたのだが、やはり根本的な部分を解決しないと、考え方は変えられないものなのだと、改めて思いしらされた。


「あんたの答えを楽しみにしてるわ。これでようやく、鬱陶しいあんたを殺せる口実が出来るんだから……」


 恐ろしい事を口走りながら、いつもの調子に戻っていたエレナ。どうやら、普通に会話出来る位には魔力が回復したらしい。

 それにしても、こんなヤバい奴がいつも俺の傍にいると考えると、恐ろしくて夜も眠れなくなるな。

 ああ、また選択肢を間違えてしまったかもしれない……。

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