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召喚された勇者は、実は異世界の魔王だった件。  作者: 2401
第三章 勇者潜入する
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第三章 勇者潜入する9-1

「助かった……のか?」

「な、な、な、何ですか……あの魔法は!?」


 巨大岩を呑み込んだアリサの魔法が消えた頃、カールとケネスは唖然としていた。

 俺も同様の反応を見せていたのだが、いち早く正気を取り戻してアリサに詰め寄る。


「お、おい、今の魔法は何だッ!?」


 俺の質問に不満そうに答えるアリサ。


「え~、さっきも説明したじゃないですか……」

「すまんが、もう一度頼む。あまりの光景に我を忘れていた」

「まあ、そういう事なら仕方ありませんね……今度こそ、きちんと聞いてくださいよ」


 アリサはそう言うと、もう一度先ほどの魔法について説明を始める。


「いいですか。あの魔法は――」



「――何なんだ、貴様らはッ!!!!」



 アリサの説明を遮る怒声が後方より響いた。


「……んっ、何だ?」


 俺達は一斉にその声の主に向き直る。

 すると、そこに居たのは、


「貴様らッ! ここがキングの間と知っての狼藉かッ!!」

「キングの間……ああ、そういえばそうだったな」


 俺達の目の前でギャンギャン吠える偉そうなゴブリンに言われて気付いたが、俺達はカール達の言っていたキングの間に到着していた。

 暗い道を抜けた先にあったこの大きな空間。そこは天井が異常に高く、暗い道にはなかった、明かりを灯すランタンがあちこちに配置されていた。そして、この何もなさそうな空間の奥には、巨大な玉座が一つ置かれている。この玉座の大きさから察するに、かなり巨大な魔族が座るモノと思われる。

 だが、そんな玉座の前でふんぞり返っているのは、普通サイズのちょび髭を生やした偉そうなゴブリンだった。


「何をごちゃごちゃ言っている! いいから、私の質問に答えろッ!!」


 喚き散らすのを止めない、偉そうなゴブリンに辟易していると、


「ライネス様ッ! こいつらは侵入者ですッ!」


 カールとケネスがライネスと呼ぶ偉そうなゴブリンの下へ駆け寄り平伏する。

 こいつがゴブリンエリートのライネスか……なんとも、小物感が漂って来る奴だな。

 エリートと言うからどんな奴なのか興味があったのだが、とんだ拍子抜けである。


「そんな事は見れば分かる! 私が聞いているのは何者だ、という事だッ!」

「何者と言われましても……なあ?」

「ええ、我々にも分かりかねますねぇ~……」


 ライネスに明確な答えを示せず、こちらに視線を送って来るカール達。いや、そんな目で見られてもな……。

 俺とお前たちは別に友達でも何でもないからな。


「ああ、俺達は――」


 と、事情を説明しようとしていた俺を遮り、


「とうとう追い詰めたわよ、クソゴブリン達ッ!! この勇者、エレナ様が来たからには、あんた達の命運は尽きたも同然ッ!!」

「その通りですぅ! ただちに誘拐された人達を開放してくださいッ!」


 エレナは高らかに声を上げ、勇者の剣をゴブリン達に向ける。一方、それに同調する形でアリサも右手をゴブリン達に向けて構えている。

 ……ああ、俺が言おうとした事全部言っちゃったよ、おい……別に良いけどさ。


「……勇者だとッ!? おのれ、なぜこの場所がばれたんだ。情報はまだ流していないというのに……」


 勇者と聞いて動揺するライネス。何かぶつぶつと言っているが、やがて、


「……まあいい。お前達、そいつらを殺せッ!」


 ライネスがカール達に命令する。

 その言葉を聞いた俺達は、直ぐに臨戦態勢を取る。しかし――


「こ、殺せって……ライネス様、正気ですか?」

「……その命令には、いくらライネス様と言えど、承諾しかねますねぇ~」


 ライネスの『殺せ』という命令に異議を唱えるカール達。

 俺達は臨戦態勢を解かずに状況を見守る。


「貴様ら……私の命令が聞けないと言うのか……」


 静かに怒りの炎を燃やすライネス。その光景に恐怖を感じているのか、カール達は平伏しながらもガタガタ震えていた。何だ……この違和感は?

 カール達はライネスに絶対服従のような態度を示している。なのに『殺せ』という命令には従わない。そういえば、以前にも似たような事があった気がする。

 あれは、エレナがカールを攻撃した時だった。攻撃を防いだカールは、反撃出来る隙があったにも関わらず、後退して文句を言っていただけだった。

 なんとなくだが、分かってきた気がする。


「エレナ、あのゴブリンから魔力は感じるか?」


 俺はライネスを指さした。


「……魔力? そんなの1ミリも感じなわいよ。てか、話し掛けないで。気が散るでしょ!」


 ……やはりな。ライネスはゴブリン達の親玉じゃない。エレナが魔力を感知していないのがその証拠だ。あと、そんなに邪険に扱わなくても良いと思うがな……。

 エレナの後半部分の言葉に少し傷つきながらも考える事を止めない俺。

 おかしいとは思っていた。ライネスの魔力はカール達より少し大きいくらい。この程度の差でゴブリン達の親玉になれるとはとても思えなかった。

 つまり、親玉は他に居る……そう結論に至った時である。


「もう良い、貴様達には頼まん! 来い、ゴブリン軍団!!」


 ライネスの声に呼応するように、奥の道からゴブリン達の軍勢がわらわらとこの空間に集まって来る。十……いや、二十は居るな……。


「ら、ライネス様ッ!! それは来るべき戦いの――」

「うるさいッ! 命令に従わない貴様達が口を挿むなッ!」


 ケネスが何か言おうとしていたが、ライネスに遮られ黙り込む。

 わらわらと湧いて来たゴブリン達は、あっと言う間に俺達を取り囲んで行く。


「ふっふっふっ、愚かな人間達よ。せいぜい、このゴブリン達と戯れるがいい」


 そう言い残すと、ライネスはゴブリンの軍勢が入ってきた道へと姿を消して行く。

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