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召喚された勇者は、実は異世界の魔王だった件。  作者: 2401
第三章 勇者潜入する
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第三章 勇者潜入する8.5

『やっと、あたしと向き合う気になったみたいね……』


「あなたは……誰……?」


 アリサは自分の中に眠る、もう一人の自分――『サキュバス』と邂逅していた。

 これは時間の流れとは関係のない、アリサが自分自身と向き合う為に生み出された、ほんの一瞬の出来事である。


『あなたが――じゃ、おかしいわね。私達が生まれて以来じゃないかしら、こうして対面するのは……』


「やっぱりそう……あなたは魔族の私なんですね」


『まさか、こんな日が来るとは夢にも思わなかったわ』


 魔族のアリサは、人間のアリサの問い掛けには答えない。

 そんな事聞くまでもないでしょ。と言いたいのか、ただ感慨深い表情を浮かべながら言葉を述べる。


「そ、それは……」


『ワイズのおかげね……あいつには言いたい事があるけど、これでチャラにしてあげるわ』


「チャラ……? いったい、何の話しをしてるんですかぁ?」


『ああ、気にしないで。こっちの話しだから』


「……はあ、そうですかぁ」


 人間のアリサが知る事はない、魔族のアリサとワイズの間で交わされた約束。それを反故にされた魔族のアリサは、しっかり根に持っていた。

 だが、その恨みをなかった事にする位、魔族のアリサはワイズに感謝しているということだろう。


『そんな事より、あなたはこうしてあたしと向き合うと決心したんだから、きちんとそれを証明してみなさい』


「証明って、どうすれば……」


『簡単な事よ……あなたの感じた事、思った事、それらを言葉にしてみなさい。そうすれば、それが答えになる筈よ……』


「私が感じた思い……分かりました。必ずあなたを納得させてみせますぅ!」


 人間のアリサは、目の前にいる魔族のアリサときちんと向き合い、しっかりとした口調で返事をした。


『……そう。それじゃあ、あなたの答えを聞かせてもらおうかしら』


 何かを悟ったように、優し気な表情を浮かべる魔族のアリサ。

 だが、それも一瞬の出来事で直ぐに真面目な表情に戻った。

 その一瞬を確認したかは定かではないが、人間のアリサはそっと口を開き語り始めた。


「私はこれまで、あなたを恐ろしい存在だと勝手に決めつけ目を背けてきました。それが原因で魔法が上手く使えない事も知ってたんです。それでも尚、私はあなたを拒み続けました。私が望む人間と魔族の共存とは相反すると分かっていながら……」


『我ながら、おかしな話しよね……まあ、あたしの事だから分かってるんだけど』


 魔族のアリサは言葉に出す事なく、心の中でそう呟いた。

 そんな事は露とも知らない人間のアリサは、話しの続きを語り始める。


「――けど、そんな私とも今日でおさらばですぅ! ワイズさんやエレナさん、私の全てを信じてくれた人達に報いる為にも……そして、私の一番の理解者である――もう一人のあたしの為にもッ!!」


 人間のアリサは、心の奥から湧き上がって来る言葉を口に出して叫んだ。

 それを聞いた魔族のアリサは、


『……そう言うと思ってた』


「え、どういう事ですかぁ?」


 人間のアリサは言葉の意味が分からず聞き返す。


『初めから分かってたわよ。あなたはあたし、あたしはあなたなんだから……そうでしょ?』


 魔族のアリサは微笑む。

 それを見た人間のアリサは、全てを悟ったように口を開いた。


「……そう、でしたね。そんな当たり前の事も分かっていなかったなんて、本当に馬鹿みたいですぅ~」


 微笑む魔族のアリサにすっきりした表情で応える人間のアリサ。


『じゃあ、馬鹿なあなたはこれからどうするの?』


「……決まってますぅ! 大切な仲間を、誰一人傷付けさせはしませんッ!!」


『……そう。せいぜい頑張りなさい。あたしも陰ながら応援させてもらうわ……』


 人間のアリサが言った言葉を噛みしめ、そう呟く魔族のアリサ。


 現実の時間にすると、ほんの一瞬の出来事。

 ワイズの言葉に揺れ動かされた、ほんの数秒の出来事である。

 これが、二つの心を持つ少女――アリサの不思議な体験であった……。

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