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召喚された勇者は、実は異世界の魔王だった件。  作者: 2401
第三章 勇者潜入する
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第三章 勇者潜入する8-1

「なぜこうなった……」

「し、知らないわよッ!」

「ずびまぜぇぇぇん!!」

「やべェ―――ッ!! 死ぬぅぅぅぅッ!!!!」

「ヒィィィィィィィィッ!!!!」


 俺とエレナとアリサとカールとケネスは迫り来る巨大な岩に追われていた。約二名、不純物が混ざっている気がするが、それどころではない。


「アリサ、どうしてお前がここに居るんだッ!!」

「あ、ワイズさん、酷いですよッ! 私を馬車に置き去りにするなんて!」

「ああ、それは悪かった……でも、お前の為を思っての決断だったんだ」


 あと、俺の保身もあるが……それは良い。


「そんな事より、俺の質問に答えてくれ。馬車には『バリア』の魔法を張っていたから抜け出せなかった筈……どうやってここまで来た?」

「バリアって……ああ、あの透明の壁ですか……あれなら、私の魔法で木っ端微塵にしてやりましたよ!」


 笑顔でVサインを送って来るアリサ。簡単に言ってくれる……。

 大方、魔法を暴発させて破壊したんだろうが、ずいぶん無茶をしてくれる。俺の『バリア』を破壊する程の威力……例えば、あの勇者が放った光の衝撃波くらいか。やはり、素晴らしい魔法のセンスを感じるな……。

 アリサの持つ潜在能力を高く評価している時である。


「バリアを木っ端微塵に破壊するって……馬車は大丈夫なんでしょうね?」


 アリサの話しを聞いていたエレナが、突然話しに割って入って来た。


「――ギクッ!! そ、それはですね……ええーっと、てへっ!」


 エレナの問いに対して、あざとい仕草で誤魔化そうとするアリサ。


「何よその反応……? あんた、まさか……」

「本当にすみませんッ!! この件が終わりましたら、必ず弁償しますので!」


 アリサは精一杯の誠意を見せて謝った。その姿を見たエレナも強く出る事が出来ないのか、溜息を吐きながら、この話しを忘れる様に巨大岩から逃げる事に集中する。

 魔法を暴発させた訳だし、聞くまでもなく馬車は大破しているだろう。現に魔法を発動させた張本人の衣服は、あちこち破れていたり、穴が開いていたり酷い有様だった。


「……あ、馬さんは無事ですよ。私の魔法って、なぜか生物にはほとんどダメージが効かない仕様になってるみたいなんです」


 どんな魔法だよ! と、ツッコみ要素の強いボケをかましてくる来るアリサ。

 だが、そんな魔法もアリサならあり得ると思えてしまう。根拠何て何処にもないがな……。


「馬車の件はもういい。それで、お前はどうやってここまで来たんだ?」


 この罠だらけの洞窟で、どうやってここまで辿り着いたのか……非常に興味深い。


「それなんですけど、聞いてくださいよ! この真っ暗な洞窟を、私一人で進むにはとても勇気が入りました。ですが仲間の為と、松明の明かりを手に取りいざ出陣! と、入ってみれば特に何もなく、どんどん進んで行った先で、このゴブリンさん達と出会いました」


 俺達と一緒に巨大岩から逃げるゴブリン達を指をさすアリサ。

 一つも罠に引っ掛かる事なくここまで来たというのか……。

 アリサの強運に、ただただ愕然とする俺。

 そんなアリサに指をさされたカール達は、やっと出番かと言わんばかりに口を開き出した。


「聞いてくれ。この嬢ちゃん、頭がおかしいぜぇ!」

「ええ、正気の沙汰とは思えません!」


 カール達の取り乱しようが普通ではなかった。

 気になった俺は、カール達にその訳を聞いて見る事にした。


「……何があったんだ?」


 俺の問いに答える為、カールが語り始める。


「この嬢ちゃんの言う通り、確かに俺達は出会った。俺とケネスは直ぐに臨戦態勢を取ったんだが、ここの嬢ちゃんは俺達を見るなり、急に詠唱を始め出したんだ」


 相手が臨戦態勢を取っていたのなら、詠唱を始めるのは当たり前の事だろう。それがどうして、カール達の異常な取り乱しように繋がるのか……俺には皆目見当も付かなった。

 だが、変わってケネスが話しを始めると、その動揺している意味を知る事になる。


「このお嬢さんが魔法を使えない事を知っていた我々は、余裕の表情で構えていました。ですが、事態は一変しました……あのお嬢さん、あろう事か魔法を暴発させてこの洞窟を破壊し始めたのですぅ~! 私とカールは慌てて暴走する彼女を止めようとしたのですが、運悪く巨大岩のトラップを踏んでしまい、こんな事になってしまいましたぁ~……」


 カール達は話しを終えると、遠い目をして走るのに集中する。

 その姿から漂う悲壮感は半端なモノではなかった。


「……どんまい」

「何がどんまいだ! お前の仲間のせいだろうがッ!!」

「まったくですっ! 我々がいったい何をしたというのですかぁ~!!」


 つい出てしまった言葉に、カール達が猛抗議を上げる。本当にすまないと思っている……。

 カール達や自分を追い詰めた張本人であるアリサは、その話しを聞いて反省しているのか、こんな事を言い始めた。


「本当にすみませんでしたぁ~。今度こそ上手く行くと思ったんですが……」


 ダメだ……全然反省してなかったわ。

 何処までもマイペースなアリサに呆れていると、ふいにエレナが口を開いた。


「ねぇ……あたし達、いつまでも走れば良いの?」


 エレナの一言で、俺ははっとする。

 確かにこの状況を打開するのに、アリサの話しやカール達の悲壮感はまったく関係ない。


「エレナな言う通りだ。何かこの状況を打開する手はないのか……」


 あの巨大岩を破壊する事は出来るが、この場所で破壊するのは危険だ。なぜなら、破壊した衝撃で洞窟が崩落する可能性がある。こんなところで生き埋めになるのは御免だ……。

 もっと広い場所があれば良いのだが……。


「おい、お前達。この先に広い場所はないか?」


 カール達に問い掛ける。

 この洞窟はこいつらの住処だ。きっと、洞窟全体の場所くらい把握している筈。


「広い場所……それなら、この先にキングの間という巨大な部屋があるぜぇ」

「まさか、そこでこの巨大岩を破壊する気ですかぁ~!」

「そういう事だ……」


 俺の発言に顔色を真っ青にするカール達。


「冗談じゃないぜッ! そんな事をすれば、キングがお怒りになられるッ!!」

「そうです! そうですが……我々が助かるには、その方法しかぁ~…………」


 と、二匹で何か話し合っているようだが、そっちの事情は知った事ではない。


「エレナとアリサも、いいな?」

「何でもいいから……はぁ、はぁ……早くしなさいよ!」

「はい……へっ、へっ……私も、大丈夫ですぅ~」


 俺達の体力にも限界がある。二人の呼吸音を聞く限り、それは遠くないと判断出来る。

 このまま逃げ続けていれば、いずれ誰かが倒れる……。

 なら、やる事は一つ……なんとかそのキングの間とやらに辿り着き、そこで巨大岩を破壊する。

 だが、ここで俺が魔法を使うというのも正直厳しい部分がある。エレナを罠から救ったり、ゴブリンに化けたりしたせいで、無駄に魔力を消費している。この状況であの巨大岩を破壊するだけの魔法を使えば、この先で待つ巨大な魔力を持つ魔族と戦いになった時、敗北する可能性が出てくる。それだけはなんとしても避けたい……。

 苦肉の策だが、ここは彼女に頑張ってもらうしかない……。

 俺は覚悟を決めて口を開いた。



「よし、アリサ……お前がこの巨大岩を破壊するんだ!!」



 俺の発言に、一同は目を点にしている。

 これが俺の出した最善の策である……。

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