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召喚された勇者は、実は異世界の魔王だった件。  作者: 2401
第三章 勇者潜入する
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第三章 勇者潜入する6

「ヒィィィィィィ! 助けてぇぇぇッ!!」

「バカヤロー! そっちは罠だらけの道だッ!!」


 洞窟の壁面から突然鋭い槍が飛び出して来たり、床が急に崩れて落とし穴になったり、目の前から突然矢が飛んで来たりと、俺の忠告を聞かずにどんどん先に進むエレナが、そんな罠だらけの道に足を踏み入れたのだ。

 槍は『バリア』で防ぎ、落とし穴は『ウインド』で浮上、矢も『バリア』で防いで罠だらけの道からエレナを救い出した俺。


「ひぐぅ……死ぬがどぉ……へぐぅ……思っだぁ…………」


 あまりの恐怖にその場でへたり込み、泣き出し始めるエレナ。こりゃあ、ダメだ……。

 なぜ、こんな状況になってしまったのか……あれは数刻前の出来事だった。



                  ◇



「暗いわね……」

「そうだな。とりあえず、この松明を使おう」


 洞窟の入口付近に置かれている松明を手に取る。

 見張りを突破した俺達は洞窟に踏み込んでいた。奥に続く道は真っ暗で、普通なら何も見えないだろう……普通ならな。


「ほら、これはお前が持て」

「何であたしが持たないといけないのよ。荷物持ちはあんたの役目でしょ」


 俺には必要のない松明を渡そうとするが、それを拒否するエレナ。こいつ……いつまでも俺を荷物持ち扱いする気だ。

 イライラする気持ちを抑えながら、俺には松明が必要ない事をエレナに説明してやる。


「俺には必要ないんだよ。この『千里眼』があれば、暗闇でも鮮明に見る事が出来る。だから、松明はお前が持て」


 『千里眼』の用途は魔力感知だけではない。こういった視界の悪い場所でも、俺の視覚が捉える範囲は鮮明に見る事が出来る。魔法ではなく、生まれ持った能力なので魔力も使わずに済む。

 そんな素晴らしい能力にケチを付けてくるエレナ。


「出たわよ、チートお目々……」


 不満そうに口を尖らせ、俺の『千里眼』にふざけた名前を付けるエレナ。


「何だよ、チートお目々って! 変な名前付けるなッ!!」

「『千里眼』なんて大層な名前、あんたの能力には似合わないのよ!」


 偉そうに腕を組み、訳の分からない事を言ってるエレナ。

 俺は溜息を吐いて、エレナに声を掛ける。


「もう何でも良いから、行くぞッ!」


 うるさいエレナに無理やり松明を手渡し、洞窟の奥へ進んで行く。


「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ……」


 松明を受け取ったエレナは、慌てて俺の後を追って来る。


 洞窟の広さだが、俺とエレナが二人で並んで歩く分には問題ない。天井だってかなり余裕がある。ゴブリン達の住処にしては広過ぎる。何か巨大な魔族でも居るのか……?

 考えても仕方がない、今は先に進む事に集中しよう。


「早く誘拐された人達を見つけ出さないとな」

「そうね。でも、どうやって探す気? この洞窟、かなり広そうよ」

「何か手掛かりになるようなモノがあればな……」


 エレナの指摘通り、この洞窟をむやみやたらに探しても、誘拐された人達を見つけ出すのは難しいだろう。そもそも、そんな時間はない。誘拐された人達の安否が分からない以上、一刻の猶予も許されない。

 改めて自分が背負っているモノの重みを認識していた時、エレナの歩く道先に魔力を帯びた小さな石が置かれているのが目に入った。


「エレナ、止まれッ!」

「な、何よ、急にッ!!」


 俺の声を聞いたエレナは、目の前にある小さな石を踏まずに立ち止まった。ギリギリ間に合ったか……。


「お前の前にある石、多分罠だ……」

「罠って、これが?」


 目の前にある小さな石を松明の明かりで照らすエレナ。


「その石には魔力が込められている。試しにこの石を……よっと」


 近くにあった何の変哲もない石を拾い、魔力を帯びている小さな石にぶつけてみた。すると、


 ――バンッ!! と小さな爆発音。


「ヒィッ!!」

「やっぱりな……」


 魔力を帯びた小さな石は小爆破を起こし、その付近の地面を小さく抉った。

 その光景を見ていたエレナは腰を抜かし、地面にへたり込んでいた。


「大丈夫か?」

「だ、だいじょ……ぶ……ちょ、ちょっと、びっくりしただけだから……」

「ほら、掴まれ」


 全然大丈夫そうには見えないので、腰を抜かしているエレナに手を差し伸べる。

 そんな俺の善意に対して、


「い、いらないわよ! あ、あたしは……グランソード王国が誇る騎士団の副団長であり、この世界を救う勇者なのよ。このくらいで……びびってられないのよ!」


 差し伸べた手は払われ、エレナは洞窟の奥へと走り出す。

 これは危険だと判断した俺は、急いでエレナを止めようと駆け出す。


「待て、馬鹿ッ! まだ罠があるかも知れないだろう!」

「あたしはやる! やってやるんだからぁぁぁッ!!」


 ダメだ……気が動転して変なスイッチが入ってやがる。


「いいから、戻れッ!!」


 エレナに再度呼び掛けるが返事は無い。何でこうなるかな……。

 俺は呆れながらエレナを追う。エレナまであと数センチのところで、分かれ道に遭遇する。エレナは迷わず右に曲がる。

 俺もそれに合わせて右に曲がる……すると、俺達が進もうとしている道の先に、大量の魔力反応を検知する。マジかよ……。



                 ◇



 以上がエレナ大泣き事件の経緯いきさつだ。本当に勘弁して欲しい……。


「もう勝手な行動はするなよ……」

「う、うん……わがっだ…………」


 余程怖かったのか、滅茶苦茶素直に頷くエレナ。いつもこれくらい素直なら助かるんだが……いや、これはこれで気持ち悪いな。

 とにかく、余計な事で魔力を消費してしまった事実は消えない。これまで以上に警戒して洞窟を進む事にしよう。


「ほら、行くぞ……」


 俺は泣きべそをかくエレナに手を差し伸べる。


「……う、うん」


 今度はきちんと俺の手を取り、立ち上がった。

 恐怖が人を変えるとは、まさにこの事だと思う今日この頃であった……。

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