第二章 勇者旅立つ6.5
――とある路地。
狭く薄暗い路地を月明かりのみが照らしていた。
「……必ず私が見つけてみせます」
路地の入口には、一人の少女が立っていた。
少女は何かを探しているのか、険しい表情を浮かべながら暗い路地の中を進んで行く。
「うう……怖くない、怖くない……」
怖さで震える自分を奮い立たせ進んで行く。
やがて、路地の行き止まりが見えて来たところで「はっ」と何かを発見した少女は、近くにあった大きなゴミ箱の陰に隠れた。
そして、そっと物陰から路地の奥を覗くと、そこには――
「や、やめてください……来ないでください!」
「お嬢さん、大人しくしてください」
「我々はあなたを傷つけたくはないのです」
二人組の男が、一人の女性に詰め寄っていた。
その光景を確認した少女は、男達の元へ駆け出した。
「そ、そこまでです!」
「……誰だッ!」
少女の声にびっくりして振り向く男達。
そんな男達を気にする事なく、少女は女性に向かって叫んだ。
「逃げてください! ここは私が何とかします!」
少女の言葉に反応する男達。
「何とかするって、いったいどうするつもりだ?」
「まったくですね。あなたも一緒にあの方への貢物とさせて頂きましょう」
男達は少女の言葉を戯言と決めつけ鼻で笑う。
だが、そんな男達の余裕を一瞬で焦りに変えてしまう出来事が起こる。
少女は両手を男達に向けて、何かを呟き始めた。
「我、火の精霊が契約者……」
その呟きを聞いた男達に焦りの色が見えは始める。
「え、詠唱ですとッ! ……奴め、魔法を使う気ですねッ!」
「魔法って、やばいじゃねーか!」
慌てふためく男達の隙を逃さなかった女性は、男達の目を盗んで駆け出す。
「……あ、しまった!」
「放っておきましょう。今はあれをなんとかしませんと」
逃げ出す女性を追い駆ける事はせず、少女に向き合う男達。やがて――
「……この身に宿る魔力を解き放つ。行きます『ファイア』!!」
詠唱を終えた少女は、魔法を放った――だが、
「……くっ…………あれ?」
「何も……起こりませんね?」
自分の身に何も起こっていない事を不思議がる男達。
それどころか、魔法の痕跡すらなかった。
「あれぇ、おかしいですねぇ~……」
魔法は不発。少女は首を傾げていた。
そんな少女のふざけた態度に業を煮やした男達。
「おかしいじゃねぇよ、嬢ちゃん!」
「まったくですねッ!」
そう言って、少女に詰め寄る男達。
「……ひっ! …………へぶッ!!」
少女は逃げようとするが、盛大に転んでしまう。
「大丈夫か、嬢ちゃん」
「おっちょこちょいですねぇ~」
余裕の表情を浮かべ倒れる少女に手を伸ばす男達。すると――
「いやぁああ! 来ないでぇくださぁああああい!!」
少女は大声で叫んだ。
「な、何だとッ!」
「こ、これは……混じってますねぇ~!」
男達は奇妙な言葉を呟くと、嫌がる少女の口に布を当て黙らせる。
その布には即効性の睡眠薬が塗り込まれていたようで、少女は数秒と持たずに眠りについた。
「こいつは危険だ……」
「ええ。我々の作戦に支障を来す可能性がありますからねぇ~」
そう言って、男達は少女を抱きかかえ闇に消えて行った。




