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1話 適性の祠に行ってきます

 ―――才能(タレント)

 それは個人が生まれ持った特性。他の人より頭の回転が早かったり、薪割りをしてみたら自然と体が動く、と後からなんとなく気がつくことができるもの。


 ―――適性(ビジョン)

 それは精霊によって授けられる(ギフト)。どんな適正が与えられるかで自分の将来は決まってくる。例えば《適性︰剣士》なら将来の職業(ジョブ)は騎士や傭兵、冒険者、つまり剣士として生きる以外の道はないということだ。


 そして15歳になった者たちは、各地にある祠へ行き自分の適性を授かる。15歳になり、祠で適性を授かって初めて成人として認められる。


 俺もその中の一人で、となりにいる幼馴染のリッカと一緒に村の同い年たちと祠を目指しているところだ。


「…適性か〜。ねえノルド。私の適性って何だと思う?」


「う〜ん。やっぱり調教師(テイマー)か玉乗りか空中ブランk…!」


「バカっ!誰がサーカスの団員に向いてるって!真剣に聞いてるんだからちゃんと答えてよ!」


リッカはお手本のように頬を膨らませてバシンと一発俺を叩く。


「ハハ、わりいわりい。リッカの適性ねぇ…難しいな…」


 そう、リッカは俺の村の誇りで、顔もスタイルも頭も良く、誰にでも優しく接するからみんなに好かれている、そんなやつだ。だからどんなにいい適性が出ても俺は驚かないし、さっき言った調教師(テイマー)はかなりありそうな線だと思う。…もっとも本人は「たとえ魔物であっても誰かを従えるなんて絶対イヤ!」とか言いそうだけど。


「よーしそろそろつくぞい」


 似たような会話をしていた同期たちのおしゃべりも、道案内をしている長老が言ったその言葉でピタリと止む。一瞬にして、少しでも触れたら切れてしまう糸のような緊張感が張り巡らされる中、俺の遊び友達の一人がおずおずと聞く。


「あの…本当にこれから何をどうするとかは教えてくれないんですか?」


「当たり前じゃ。それがこの適性の儀式のしきたりなんじゃから」


 何が起こるかわからない場所に一人で入っていかねばならず、そこで自分の人生が決められると思うとどうしようもなく不安になるのも当然だ。


「そしてもちろんじゃが祠の中で何があったかは決まった適性以外絶対に人に話してはならんぞ。もし自分たちのせいで15になる前の子どもたちに儀式の中身が知られては大変じゃからな」





 祠はいかにもといった山奥にあり、今はそんな山の音と自分の鼓動以外何も聞こえない。誰もが不安で口を閉ざしている。ふと隣を見ると、少しうつむいたリッカの顔が目に入る。自分のことでこんなにも心配の表情を浮かべるリッカは初めて見た。何か声をかけないとという思いが募るが、何も言えないまま祠につく。


「よし、それでは順番に祠の入り口に並んで待ち、前の人が出てきたら次が奥へ向かうのじゃ」


 長老は皆の不安な表情を見て、微笑みながら一言付け加える。


「な〜に心配はいらんよ。奥に入ったら30秒もかからず終わるのじゃからな。むしろ暗い入り口で待つだけ余計に不安になる」


「…!」


 みんながその言葉を聞いて慌てて並びだす。

 ………リッカ出遅れてるじゃん…最後尾になってるじゃん…


 いつも話すときと違い、今にも泣き出しそうなその顔を見て俺が平然と3番目に並んでいられるわけがない。しゃーねーなといった風に、遠くの木を見ながらさり気なく一番後ろに移動する。


 長老はそんな俺たちを見て嬉しそうに微笑んで言う。


「それでは適性の儀式、頑張るように」








 真っ暗だ。俺たちが並んでいるこの入り口もひどいが、奥はもっと暗い。例えるなら、夜の田舎の「いやなんもみえねーじゃん!」がこの入り口で、「やばい!魔法で目を潰された!」が奥の暗さだ。






「これ…もう入っていいのか?」




 静寂を破ったのは、先頭に立つ俺たち同期のリーダー的存在なアーク。あいつの父は村の用心棒で、もとは大きな街の騎士団長だったらしい。昔は俺とリッカとアークの3人でよく遊んでいたのだが、あいつの母親が病気になってからはほとんど遊ぶこともなくなった。




 …………………コツっ…………コツ






 アークの足音が聞こえなくなってしばらく経つ。あいつが奥へ向かってから10分はたったと思うが、おそらく実際は4分ほどだろう。長老の言っていることが本当なら、実は精霊のもとへたどり着くまでは長いとかそういうことなのかもしれない。






 ……カッ……コツコツ






 さらに2分ほどしてようやく戻ってきた。アークは祠から出るときに俺と目が合い、ニィッと笑いかけた……………ような気がした。……だって暗くてあんまり見えないんだもん。


 アークのあと、次々と同期たちが入っていき、確かに彼らは皆30秒程度で戻ってきた。気がつけば入り口にいるのは俺とリッカだけ。祠に入る前はなんて声をかけたらいいのか分からなかったが、今なら分かる。




「なれるよ。なんにでも。リッカが望むならそれこそ―――賢者だってね」




「な、なんでわかったのよ!私が、その………」




「そりゃお前何年一緒にいると思ってんだよ。幼馴染の称号は伊達じゃないぜ」




 おそらく赤面してうつむき黙ってしまったリッカに、俺はちょっとふざけて言葉を返す。






「でも賢者なんてそれこそほんとに小さい頃の話でしょ?あっ、もしかしてあの時にもう気がついて…?」




 そう。俺たちの世界には有名なおとぎ話があって、昔はよくアークの母に3人で読んでもらっていた。題名は『建国神話』で、内容は勇者と賢者と竜騎士が精霊と協力し、世界をまとめて国を建て、平和な世の中をつくるといったよくありそうな物語。でも当時の幼かった俺たちはその話に夢中で、3人が3人とも違う登場人物に心を奪われていた。自らを犠牲にしてでも仲間を守り抜く竜騎士に憧れるアーク。その常人を遥かに凌ぐ知恵と頭でピンチを乗り切る優しい賢者に憧れるリッカ。そして誰より強く、誰より人を惹き付ける勇者に憧れる俺。もっともリッカは「こんな物語興味ないわっ」って言う感じを出して隠そうとしてたけどね。




「まあまあ、そんな心配すんなって。どんな適性が出てもリッカはリッカだろ?適性のことはでてから考えればいいんだって」




 俺だって内心は震えているのだが、せめてここではと強がってみせる。




「…うん…そうよね…………よし!じゃあ後ろつかえてるから早く行ってくるね!」




 後ろ、別に俺だけなんですけど…


 タッと軽く駆け出すように進むリッカの背中を見つめていると、上手く聞こえないけれど何か聞こえてきた。




「強がっちゃって。………ありがと」




 ……あー、あー、モチロンナニモキコエテマセン。

〜少しずつ設定を出していく欄〜


スキル・・・《身体強化》など、人為を超えた特殊な能力や技のこと。同じスキルでも習得に個人差があり、明確な条件があるわけでもない。

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