4-3 ゴブニュート村③
久しぶりにゴブリン村の姿を見たことでセンチな気分になったが、そんな俺の所に、村の長である『ハイゴブリン・エルダー』と『ゴブリン・クラン』二組がやってきた。
背の低いゴブリンばかりだが、百に満たないとは言え数が揃うと迫力があり、なかなか良い眺めである。
「ギッ!」
「うん、良く集まってくれた」
集まったとは言え、隊列を成しているわけじゃないので、小学校の全体朝礼にも勝てない状態だけどね。
これを、『合成』によりどこまで良くできるかが楽しみだ。
「皆にはこれよりゴブニュートへの進化をしてもらう。全員服は着ているね?
では、『合成』!」
グダグダ長い話をする気は無いので、あっさりと合成を行う。
都合、三回。
村にいたゴブリン達がキラキラと天に舞う光へ溶けて姿を消したかと思うと、今度は逆再生をするように新しい姿に生まれ変わっていく。
何も知らない人がぱっと見ただけでは背の低い人ばかりがいる村に見えるだろう。
よく見れば顔の作りがどことなく違ったり、耳が長かったりと違和感を感じるだろうけど、俺個人としては許容範囲。
ちょっとした隠れ里と言い張れるようにはなったと思う。
『ゴブニュート・エルダー』:モンスター:☆☆☆:やや小:10日
ゴブニュート・エルダーを召喚する。この魔物はゴブリンであり、人間である。人と魔の、両方の特性を併せ持つ。エルダーは種の長である。多くを束ね、導くだろう。
『ゴブニュート・クラン』:モンスター:☆☆☆:やや大:1ヶ月
ゴブニュート・クランを召喚する。この魔物はゴブリンであり、人間である。人と魔の、両方の特性を併せ持つ。氏族は適切な庇護の下であれば大いに栄え、地に満ちるだろう。
クランの方はそれぞれに現在の数が表示されるけど、そこは置いておき。
エルダーは元が『ハイゴブリン』だったが、結局ただの『ゴブニュート』にしか成れなかった。
新種ができるかなと期待していたから、ちょっと肩すかしを食らった気分だ。
ただ、夏鈴たちもゴブニュートから種族的な進化をしていないので、そこはそういうものなのかもしれない。
おそらく、合成・進化時に条件を満たしていないんだ。
だからあと一歩、先に進めない。
そう言えば、ゴブリンもハイゴブリンになるのは簡単だったけど、今はまだその先がないんだよね。
エルダーもそうで、統率力が上がればキングとかクィーンのような上位種に成れると思うんだけど。
「お・は・よ・う」
「あ? うー、うぃ?」
「みゅー?」
「わ、あ、にょ、ぎゅ?」
なお、夏鈴たちの時もそうだったけど、ゴブリンからゴブニュートになったからといって、いきなり日本語を喋れるようにはならない。彼らは日本語をこれから覚えることになる。
つまり、誰かが教えないといけない。そして俺はそういう事をするつもりが無いので、他の誰かに委託するのが正解だ。
「じゃ、後は任せた」
「ああ。風呂の代金分だ。しっかり働くさ」
「俺たちに任せてくれ!」
ここはゴブリン村からゴブニュート村になったわけだが、それだけで何が変わるわけでもない。
変われるようになっただけなのだから、変えていかないといけない。
その変化を終たちフリーマンに任せて、俺は一度家へと帰るのだった。