4-2 ゴブニュート村②
ゴブリン村は、結構広くなっている。
以前のままでは駄目だろうと、俺なりに知恵を絞って環境を整えているのだ。
その一番の成果は『道』で、俺の家とゴブリン村が一本の整備された真っ直ぐな道で繋がるようになったことだが、そこは横に置いて。
「ご主人、倉庫への運び込みが終わりました」
「うむ。ご苦労」
俺は小学生か中学生時代に習った『高床式倉庫』に蕎麦の詰まった袋が運び込まれるのを見て満足そうに頷いた。
ゴブリン村の主食は狩りによって賄われていた。
狩猟では食料供給が安定しないという事で、俺は家の近くに自生している米や、カード能力で作った蕎麦を中心とする農業体制へとシフトさせた。
で、食料を作るのはいいんだけど、それが長期保存できないと意味が無い。
だから俺の家のように、少し地面から浮かせた倉庫を作らせたわけだ。
このあたりは毎年恒例の水害があるからね。
床を浮かせないと保存ができないんだよ。
単純に石垣を組んで土台を作るっていう手もあったんだけど、石は他に使いたいので高床式にした。
本来の高床式倉庫は獣害対策や風通しの関係だったはずだけど、便利ならそれで良い。
ただ、今ではこうやって軽く話せることだけど、ここまで辿り着くのは大変だった。長い道のりだった。
だって、ゴブリンにはまともな言語がないので、意思疎通に苦労したんだよ。
カードで作るのも難しそうだったしさ。普通の建築物を教えるの、どうすれば良いんだよって話さ。
縄文人レベルのゴブリンに、弥生人なみの木造建築に挑めって言う方が間違っていたのかもしれないが。
木材を板に加工するという事を教え、その板で建物を造ることを教え、高床式にすることを教え。
いや本当に苦労した。
こっちも外観だけ知っているっていうレベルで手探りだからさ。教えたことが正しいかどうかってのも問題だったし。
最初に作った倉庫は初日に床が抜けて大騒ぎになったんだよね。
今では重量を計算し、柱の太さや本数と床板の厚みをちゃんと記録に残しておいたから、同じ倉庫を建築することもできる。
失敗を糧として、同じ事を繰り返さないようになっている。
……俺が監督している時はね。
言語が未発達で文字も無いゴブリン。
彼らの文明開化というか、知能の発達に、ゴブニュート化は大いに役立つだろう。
夏鈴とかのように言葉が話せるようになれば、今まで以上に村は発展する。
カード強化で知力を底上げすればいいとか、言わないで欲しい。
一回の強化で劇的な変化は期待できないんだよ。
もう数百年すればゴブリンも自然と進化しそうだけどさ、つまり本来はそれぐらい時間のかかることなんだから。
簡単じゃあないんだ。




