4-1 ゴブニュート村①
俺は『道』を歩き、ゴブリン村にやってきた。
『ゴブリン・クラン』の合成を行うためだ。
『ゴブリン・クラン』だが、ゴブリンのテキストにある「繁殖力が強い」という部分に関連してか、自動的に数が増えるという能力を持っていた。
最初は気のせいかと思ったんだけど、出しっぱなしにすると月に1人増えていて、3人増えたところで気が付いた。今では2枚に増えたこともあり、70人以上も村に住んでいる。
もともと家の数は多めだったので、今のところ数が増えても問題は起きないが、このまま増えたらどうなるんだろうかと思う。
『ゴブリン・パーティ』も同じで、こちらは半年に1人増える模様。パーティの方は『ゴブリン・クラン』を増やすためにコピーの経験値稼ぎで出しっぱなしにしてある。
ただ、アイテムと合成した『~~部隊』のカードになると増えない模様。たぶん、装備や道具の絡みとは思うけど、なんかけち臭い。合成の時は数が増えるのにね。
そんな『ゴブリン・クラン』だけど、このたび、めでたく『合成』するカードが手に入った。
『ヒューマン・スレイブ』だ。
何気に、『ヒューマン・スレイブ』が『ゴブリン・クラン』と合成可能カードだったのだ。
合成先はゴブニュート系。パーティの方で先に試したので、間違いない。
これを機に、手持ちのゴブリンは数枚を残し、メインは全部ゴブニュートにしてしまおうと思う。
実はちょっとだけ、繁殖速度の低減を期待しているからだ。
人数が増えるのは良いことだけど、それも俺のコントロールができる間の話だ。
食料や住居など、増えすぎてしまえばいずれ足りなくなる。
俺のカード能力がどこまで有効かも分からないので、家を建て農地を増やして食わせていくにしても、土地は有限だ。いずれ人とぶつかる。
この世界はまだ“土地あまり”で人の住んでいない、人の手が入っていない場所が多いけど、いつまでそれが続くかは分からない。
わざわざ人間と戦争なんてする気にもならないから、ある程度こぢんまりとした、質の高い箱庭ができれば、俺はそれで良いんだよ。
俺は人間嫌いというか、コミュ障というか、器が小さいというか。
ある程度好意的に接してくれる人としか上手くやっていけず、こちらに対して攻撃的な人間をいなすといったことが苦手なようなので、人間社会に溶け込むのが難しい。
下手に力がある分、できる軋轢は人死にを招く。
ちょっと離れたところで、浅い付き合いをする方がお互いの傷が小さくて済むだろう。
それでも、ちょっとだけ期待していることが一つあって。
今回の合成が終わった後に、ゴブニュートを1パーティだけリリースしようと思っている。
ある程度教育して、それからリリースして、隣人として付き合っていけば。
きっと、何か俺では思い付かなかったような変化を見せるんじゃないかな。
自分の思い通りになる駒しか信用できない。
でも、隣にいるのは駒では無い、俺の思い通りにならない一個人が良い。
我ながら矛盾していると思うけど、俺はわりとそういう所があるんだよな。ワガママな話だよ。