0-7 食生活の改善/リリース
初日は休憩後にもう一度パンとミルクを用意して、それを胃に入れたらすぐに寝た。
それ以上何かやる気が起きなかったのだ。
翌朝もパンとミルクを胃に入れる。
パン。塩パンなんだけど、小石か砂が入っているので、これをいつまでもそのまま食うのは止めておきたい。
そんな訳で、俺は森で適当な木を材料に、深皿を作ってみた。
大きさはミルクを≪マテリアライズ≫したときについてくるカップの三倍ぐらいの容量だ。
ナイフでカリカリ削って、『火口箱』で用意した火で炙ってバリを減らし、水場の水で変な罅などが無い事を確認した、俺渾身の逸品である。
まずは『水の小樽』『鉄鍋』のカードを普通に使って用意する。
次に『塩パン』のカードを手にし、カード化を解除する。
「≪リリース≫『塩パン』『ミルク』」
≪マテリアライズ≫と同じく、塩パンが現れる。
しかし、これまではカードが手元に残り、イラストがブラックアウトして使えなくなっただけだったのに対し、今度はカードそのものが消えている。
ついでに、俺の魔力は消費していない。
これがカードの使い方の一つ、≪リリース≫。
要はカード化したものを、もう一度元に戻すだけのやり方だ。
これをすると、リキャストタイムも何も無くなるので、またカードを使うといったことが出来ない。ただ、もう一度≪カード化≫すればカードに戻せるけど、それは普通に使うよりも魔力を消費するので、得策とは言えない。
使う時に魔力を消費せずに使えるのは良い事のように見えるが、再利用の利益を考えるとそのまま普通に使う方が得なんだよね。色々と。
ただ、今回は≪リリース≫の良い使い方だ。
俺は塩パンを一度深皿に入れると、小樽の水を流し込む。
そうしてパンをふやかして、手で揉み、水に溶かす。
しばらくそうしていると、溶かしたパンの中から異物が出てくる。俺を苦しめた小石などだ。
これを丁寧に取り除き、食べた時の嫌な感触を無くしてみた。
今度は深皿の中身を鉄なべに移し、『ミルク』を足して、火にかける。深皿のついでに作ったスプーンでゆっくりとかき混ぜていく。
しばらく煮込むと、そこそこいい匂いがするようになった。
具無しシチュー、完成である。
カロリー的には特に増えていないけど、口に入れてもジャリジャリした触感が無いだけ素のままよりはマシという、それだけの品だ。
これを深皿に移し替え、もう一度≪カード化≫する。
具無しシチュー:アイテム:☆☆:極小:12時間
塩味のきいたパンをミルクで煮込んだだけのシチュー。熱い。空腹をそこそこ満たす。
格・消費・リキャストタイムは変わらず。
うん。いい仕事をした。
ついでにスプーンも≪カード化≫し、壊れてもいいようにする。
こちらは格が☆なので、ちょっと微妙かな? 道具類の格はだいたい☆☆なんだけど。
ただ木を削っただけのスプーンだから、そんなものなのかね。
二日目は外に干しておいた乾いた草も≪カード化≫して、余った魔力は『ヒール』の強化に回し、終了。
『ヒール』は☆☆だから、レベル10まであと3日か4日はかかりそうだ。
先は長いね。