3-17 夕餉
もともとヤクザって、警察があてにならない頃の自警団なんだよな。
それが、警察がちゃんと仕事をするようになって出番がなくなり、それでも解体されずに残った結果が暴力団と。
警察が未発達な時代の自警団だけに、法律じゃなくて暴力で社会を守っていたわけだからなぁ。
この世界じゃあ現役なわけだ。
そんな堀井組に手を出した俺は、尾張の連中に嫌われても仕方がない。
尾張の国には、ほとぼりが冷めるまで行かない方が無難だというのには賛成だ。
もしも海に行きたければ、滋賀県経由で三重県に行くとしよう。
宿の主人と話をし終えた俺たちは、早めの夕飯を食べてから宿を出ることにした。
今は夏なので夕方でも日が高く、暗くなるまで時間がある。
川島町を出て、野宿する場所を探すぐらいの余裕が有る。
今日も泊まろうとすれば、また夜中の襲撃を警戒しないといけないからね。
さすがに連日連夜の襲撃は勘弁してほしい所だ。
「で。こうなる、と」
「創様。やってしまいますか?」
「食べる? これぐらいの毒なら、私なら食べても死なないよ」
「いいや。主人に話をしておくだけでいいだろ。ちょっとネタに走るけど」
早めの夕飯をリクエストしたところ、その夕飯に毒が混じっていた。
しかも致死毒。
『川魚の夕餉(毒入り)』:アイテム:☆☆:小:6時間
ご飯、澄まし汁、焼き魚と漬物の夕餉。味は良いが、焼き魚のワタには致死毒が仕込まれている。
殺した後、川に死体を捨ててしまえば後腐れが無い。流民、旅人だけに死んだところでだれも騒がない。
半分習慣になっていたので出された食事をカード化して内容を確認してみたんだけど。毒が仕込まれていたようだ。
この場合、毒をどの段階で仕込んだのかが分からないのが厄介だ。
川魚って泥を吐かせるために生け簀かなんかでしばらく生かしておくらしいけど、その生け簀に毒餌を使われただけかもしれないし。
――宿の板前とか給仕が尾張派で、飯を作ってるときに仕込んだのかもしれないし。
あんまり深く考えたくないな。
川島町に来るのはこれが最後だと思うけど、あえて波風を立てるのも面倒くさい。
宿の主人にあとは任せて、俺はさっさと帰るべきか。
ではなく。
別の、外道な作戦を思いついてしまったので、それを実行することにした。
「大変だ! 飯を食い終えたら、うちの子たちが、血を吐いて! 倒れて!
薬! 何か薬は無いか!?」
毒の効果を確認し、引っ掛かったふりをして騒ぎ立てるのだ。
ある程度でも上手くいったと思わせたら、どう出るだろうね?




