3-16 宿で一夜明けて
一回迎撃に成功したからと言って油断するわけもなく。
その日の夜にもう一度襲撃を受けたので、これも同じように迎え撃って寝ずの番は修了。
朝日が昇るようになると人の目が増えるため、そこから先、しばらくは大丈夫だろうと思い、俺は布団で横になった。
俺の部屋には三人娘も集合し、同じく寝ずの番をしていた莉菜が寝ている。
夏鈴、凛音は寝ている俺たちの護衛役。
この2人はちゃんと夜の間に寝ていたのだ。
いかん。眠くて頭が回らない。
おやすみなさい……。
昼過ぎになって目を覚ました。
通常、チェックアウトは午前中にするものだ。なので、宿は2泊目になる。
相手の油断を誘うためにも連泊の予約はしていなかったが、この時期は部屋に余裕があるらしく、そのままいけたとは夏鈴の弁。
宿の手配、ありがとうな。
ちなみに資金はチンピラから回収したものである。
全員がちょっとは小金を持っていたので、財布の中身を全部回収すると数万円の収入になったのだ。
お金がカード化して消えてしまうのは勿体ない。
これも経済保護のためである。大嘘だけど。
宿の人というか、店主と話し、昨晩襲撃があった事を教える。
その情報の中には勿論、俺の所に敵が一直線に来たというものも混ぜておく。お宅の店にスパイがいますよ、とね。
宿の主人は情報が漏れた経路からスパイを特定、処分を行うわけだ。
アホな事をしたわけだから、店としても警察に訴えていい。
そうして店員を失うという対価を追加で支払うものの、罰金で少しダメージを軽減しつつ、敵対勢力を犯罪者へと落としていくわけだ。
関係者もついでにお縄にできれば上出来だが、この程度の事件だとそちらへは牽制以上の意味はないかな?
尾張派の連中の切り崩しをチマチマ行うわけだね。
こっちは堀井組の情報を聞かせて貰った。
堀井組は尾張に根を張るヤクザの統括であり、規模は数千人という大組織。
チンピラがモヒカンなのは人目を引くためのカモフラージュで、「モヒカンでは無い=堀井組じゃない」と連想させるためらしい。
髪型が一番分かりやすいから、ああしているという。
ちゃんと理由があったんだねぇ。
で、大きめの都市にはだいたい支部があり、兵隊が詰めている。
モヒカンは100人いればいい方で、実際はそこまで数がいないようだ。
ただ、堀井組は一般人に迷惑をかける事はあまりせず、どちらかと言うと俺の知るヤクザより自警団に近い性質を持っている。
だから堀井組には裏の協力者も多い。
俺は二度と尾張に行かない方が良いよ、と、店主さんに忠告された。
尾張の国ではどこで堀井組の刺客が襲ってくるか分からないらしい。
なかなか面倒な事になったなぁ。