3-12 マンハント①/釣り
マンハントと言うと、これから自分が酷く嫌なことをするように聞こえる。
もっとも、やって面白いことじゃないのは間違いない。
俺たちがいるのは、すでに江南のあたりだ。
ここから少し南に行くと各務ヶ原や川島のあたりに出る。
美濃の国まで行けば逃げ切れると思うし、狩りをするにはちょうど良い位置だと思う。
俺たちがやる事は単純だ。
誘い出し、人目に付かないところでモヒカンを殺すだけ。
自分で言っていて気分の悪くなる話だけど、簡単に殺せるので、これからするのはただの作業になるだろう。
「んじゃ、莉菜。任せた」
「はーい!!」
誘い込む約は莉菜に任せた。
ゴブニュートって作り物めいて人間っぽくないというか、覚えやすい顔立ちというか、まぁ俺よりも分かりやすい、目印みたいな子達である。
実際、襲われる時は三人娘の誰かが気が付かれた時だ。長い耳を隠すような格好をさせていることもあり、モブ顔で目立たない俺よりも分かりやすい。
こうなると護衛役に人間を召喚して使役したいと思わなくもないけど。
そんなメリットから来る誘惑でも、ゴブリンに使い潰された人間を召喚するという嫌悪感の方が今は上だ。理由はともかく、今のところその予定は無い。
新しく回収した人間カードもあるから、そちらなら嫌悪感も若干薄いけどね。
ただ、ヤクザやモヒカンは信用できないって意味で召喚したくなかったり。
結局、まだ人間のカードを使うには至っていない。
タイミングじゃないんだよ。
話を戻し、おびき寄せる餌役を莉菜に任せたのは、単純な能力適性からの消去法だ。
対象である俺が囮になるのは論外。隠れて魔法を使う、かもしれない。
夏鈴は俺の護衛。夏鈴は俺と一緒に身を潜めている。
凛音は遠距離攻撃役であり、火力担当なので狩り場で隠れず待機する事になる。
こうなると、莉菜ぐらいしか空きがない。
俺の護衛役を夏鈴と交替する案もあるけど、護衛としてのキャリアは夏鈴の方が上だから。できるだけ夏鈴に任せたい。
なので、莉菜が囮で餌役。
「ちっさい子供にそんな事をさせるなんて」とか「男の気概を見せるべきだ」とか言われそうだけど、召喚主である俺の死は全滅フラグなので、俺は危ないことをしない。
それに、警戒する理由はちゃんとあるからね。
俺はカード能力なんてスペシャルな能力を貰ってはいるが、基本的に普通の人である。
俺自身が最初からスペシャルという事はない。頭の出来や運動能力、その他諸々、普通の人間なんだ。
そんな俺にできることが、他の誰にもできないなんて話はないし、相手も苦戦すると分かれば――――