3-11 堀井組の実力
自動車も無ければ電車も無い。
町と町を繋ぐ道も舗装されているわけではないから、油断したのだと思う。
“電話”という手段があったことを頭の外に追い出していたのだ。
しかも無線通信ができるような基地局があったなど、完全に想定外である。名古屋では街灯があるのを見ていたというのに、そこまで発想が至らなかったのだ。
携帯ではなく固定式のようだが、この世界には無線通信があるらしい。
その結果、何が起きたのかというと、単純に俺の情報が拡散してしまったという訳だ。
移動手段、馬もあるみたいだからね。しかも森にも対応した木曽馬っぽいの。荷運び用の道産子もいるようだ。
あのモヒカンは堀井組の下っ端ではトレードマークとして扱われているらしく、小さな村にすらモヒカンが配置されているのを見て、俺はうんざりすることになる。
こちらの移動経路は完全にバレている。
何処からか情報が漏れたとしか思えない。
そして、そう言えば名古屋の警察で堀井組の話を聞かなかったと思いだした。
これほどの規模のヤクザであれば、当然地元住民は情報を持っていただろうにも拘らず、だ。
たぶん、警察経由で情報が洩れている。
自首して自供しに行ったのは失敗だったか? 次は逃げるようにしよう。警察が信用できない。
そんな訳で、俺はいくつか思考を切り替えた。
逃げた方が楽な結果になると思っていたけど、迎え撃った方が楽かもしれない、というふうに。
生き物を殺す事には慣れた。
ただ目についた人を殺すような真似は絶対にしたくないが、敵対するなら人間相手であっても容赦しない。
モヒカンを殺す事はいつでもできた。やらなかったのは、殺し過ぎると面倒だろうというだけ。
殺さなくても何とかなるだろうと思っていた結果、町や村には寄れず、遠回りをさせられている。当然、面白くない。
「創様。いつでも行けます」
「ああ。数を減らしてやろう」
逃げるばかりでは問題は解決しない。
この決断でモヒカンの連中を人として見ることができなくなるだろうけど、そこは諦めた。
だからいくつか条件を付けて、俺はマンハントを解禁することにした。
利益を優先し、馬など有効そうな物を持っている事。
人目が無い所まで誘い込まれるような奴らである事。
規模は問わない。何人いても勝てるから。
俺たちは標的を見定め、行動を開始する。
あいつらにも家族がいるだろう。
帰りを待っている人がいるかもしれない。
こんな事、やりたくてやっているのではなく、命令されて仕方なく従っているのかもしれない。
ただ、だからと殺さないように配慮しようものなら、俺はずっと追われるままで苦労する。
優しさとか人道的とか、それでどうにかなるならどうにかしてほしい。俺がアイツらを殺す前に。