0-6 野犬の襲撃/魔法
俺と夏鈴が草刈りをして3時間ぐらいか。
休憩をしようと思って手を止めると、不意に草が音を立てた。
兎か?
俺は立ち上がって少し腰を落とした状態で姿の見えない訪問者に警戒をすると、草むらからいきなり野犬? 狼? が一匹、飛び出してきた。
「うぉぉぉっ!?」
俺はとっさに腕で顔をかばうが、左腕にかみつかれ、鋭い痛みに襲われた。
飛び出し突進されたことで俺は押し倒され、推定野犬に抑え込まれてしまった。
「夏鈴! 助けてくれ!」
俺は迷わず夏鈴に助けを求める。俺たちの持つ唯一の武器、『鉄のナイフ』は夏鈴に渡したままだ。完全に油断していた!
夏鈴は慌てて俺のところに駆け寄るが野犬は怯まず俺を攻撃してきた。
噛んでいた腕を解放し、今度は顔に食らいつこうとする。
「そうだ! 『魔力よ、矢となり敵を撃て』『マナボルト』!!」
腕で必死に顔をかばう。
そのさなか、俺は手持ちに攻撃用のスペルカードがあったことを思い出す。
カードを入れたポケットに手を当て、テキストに書かれた呪文を思い出し、恐怖に耐えながら唱え切って見せた。
すると青白い光が俺の野犬の間に現れ、矢の形になると野犬の喉を貫いた。
俺の体におもいっきり血が降りかかる。
「キィーーッ!」
ついでに、夏鈴が野犬をナイフでめった刺しにしてとどめを刺した。
死ぬかと思った。
油断していたし、スペルカードの事を忘れていたし、とにかく酷い戦いだった。
「『魔力よ、かの者の傷を癒せ』『ヒール』」
どうせだから、回復魔法のカードで怪我を治した。
『マナボルト』と違いこちらは一枚しかないのだが、何とか怪我は全部治ったようだ。助かる。
戦力になるし、野犬をカード化しようかと考えたけど、俺の魔力はすっからかんだ。カード化に必要な魔力が無い。
『リンゴ』の強化検証でそんな余裕は全く無い。
「くそ。服に穴が開いた」
野犬の肉はゴブリンに食って良いと許可を出し、俺は家に戻ることにした。
疲れたし、夕飯を食べたいけど、パンとミルクを用意する魔力も無い。
今は休んで、魔力を回復させることが必要だった。