3-8 世紀末?
モヒカン5人衆を殺させてしまった。
俺が襲われたという事で、護衛であるゴブニュート三人娘は、この5人を敵と認識してしまったのだ。
最初の一人が死んだ時点で逃げてくれればそこで被害が収まったのだが、残りは復讐したかったのか破れかぶれなのか、俺に襲い掛かり返り討ちにされてしまった。
殺さずに済ませる事も選択肢として考えていたが、その決断をする前に全部終わってしまった。
三人娘は、忠実に仕事をこなしてくれた。
決断の時は待ってくれない。
今回の件。彼ら5人が死んだ、殺された、殺してしまったのは、俺の判断の遅さが原因の一つだろう。
俺は反省した方が良さそうだ。もっと迅速に決断できるようにならないといけない。
そして死体を前に、俺は冷静に、現実逃避を兼ねてこの後どうするかを考える。
困ったことに、一連の流れは不特定多数に見られているので隠ぺいは不可能。逃げてしまったところで実害は無いが、小さいとげが刺さったままでいるよりさっさと自首した方が良い。
逃亡し殺人犯として指名手配されるより、正当防衛を訴えて無罪を勝ち取りにいきたい。
その方が、おそらく面倒が少ない。
相手が襲い掛かってきた、相手の数が多い。
これらは客観的な事実と言える。
命の危険があった、というのは主観的だが、こん棒で殴られたら、ただでは済まない事を考えれば、そこまで間違った事は言っていないはず。
俺は死体5つを道の横にどけて、布をかぶせて名古屋の警察まで自主をしに行った。
「罰金2万円、ですか?」
「罰金じゃないよ。死体処理費用だよ。無罪なんだし、罰金は無いんだよ」
美濃の国でも思ったが、この世界の日本における司法は、現場の判断が強く優先されるようだ。
警察に司法権がある? 冤罪・罪の捏造が乱発しそうな恐ろしい制度だな。
今は助かるから良いんだけどさ。
殺人事件だというのに、裁判も何もなく、無罪判決が出た。
で、死んだ連中の遺体を片付け無縁仏として火葬するから、その費用を寄付してくれればいいよと言われた。
どうやら、俺を無視して名古屋に行った人の中に、俺たちが絡まれていると通報してくれた善意の第三者がいたようだ。それも、複数。
名古屋は都会で人が冷たいと思ってしまった俺だが、そうやって警察に話をしてくれる程度に人情があったのだ。
ちょっと誤解していたね。人が、優しい。
そして岐阜の時のように、警察がいくつかアドバイスをしてくれた。
「街道を歩いているときに何かあっても、警察が間に合うって事はあんまり無いから。基本は自衛だよ。まぁ、大丈夫そうだけどさ。
もしも襲われて殺されたとしても、それと分かる何かが無いと警察は動けないから注意してね。
町から出たら無法地帯。街道の整備と警備はしているけど過信しない。これを忘れないよう、注意して」
分かっていたつもりだけどさ。
これまで人に襲われたことが無かったけどさ。
世の中は、思った以上に世紀末だった。
そりゃ、モヒカンヘアーも湧いてくるわ。