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3-7 モヒカン殺人事件

「おい、お前ら。いや、お前一人か。荷物と女を置いてさっさとどこかに行きな」


 人生、予測できない事などいくらでもある。


「カシラ、ナリは小さいですが、なかなかのジョーダマですぜ」


 創作の世界ではよくあるらしいが、これをリアルで見た事がある奴など、そうはいないだろう。


「じゅ、順番。オデにも回して欲しいんだな」


 モヒカンヘアーのヒャッハーさん御一行など。





 人の多い名古屋を出ると決めた俺たちは、東に行くか西に行くかを考えた。

 特にあての無い旅だ。何でもいいかと棒倒しで行き先を決めた俺は、指し示された東の方に向かって歩き出す。


 そうやって歩く事、4時間。

 広い名古屋を出て、特に舗装されていない街道を10㎞は歩いたかなという所で5人組の男に囲まれた。

 頭部はモヒカンで統一され、上半身は裸。下半身は腰にボロ布を巻いただけの蛮族スタイルだ。どいつもこいつも筋骨隆々と言える体を持ち、俺より頭一つ背が高い。

 いずれも手にはこん棒を持ち、俺たちを見て下卑た表情を浮かべている。


 ……なぜモヒカン?



 俺は一瞬、コスプレを疑った。


 名古屋を出てほんの数時間の距離に、こんな連中が出るというのはあり得ないと思ったからだ。

 これが馬での移動を2時間ならまだ分かるが、俺たちは歩きだ。そこまで急いだという事もない。

 治安維持部隊、警察のある名古屋近辺でこんな事をする馬鹿が本当にいるのだろうか?


 それに、俺たち以外の人の行き来も行われており、誰も関わろうとしないが人の目もある。

 言い逃れなどできないだろう。



「おい、クソガキ! 黙って突っ立てないで、さっさとどこかに行きやがれ!」


 まず、方針を決める。

 多少疑わしいが、一応喋っているのだから人間だ。話し合いで解決できるなら、その方が良い。

 だが、話し合いでどうにもならなかったらどうするか?


 ブチ殺すか?

 半殺しで止めるか?


 こいつらはゴブリンよりは強いだろうが、俺たち4人がこの程度の連中に後れを取るはずがない。

 圧倒的強者ムーブというか、戦えば勝てるだろうし、どの程度で終わらせるかもこちらが決められる。

 そういった傲慢が許される状況で、俺はどう振る舞うべきだろう?



「無視してんじゃねぇーーっ!!」


 長考に入って黙ったままの俺に苛立った男の一人が、こん棒を大きく振りかぶった。

 フルスイング。当たれば俺を一撃で殺せるだろう威力の攻撃。

 それを俺に向けようとして――そいつの首から上が吹き飛んだ。そこでようやく、周囲から悲鳴が上がる。


「凛音、ありがとうな」


 モヒカンその1を殺したのは、凛音だ。凛音がマナボルトの魔法を使って俺を守ったのだ。

 とっさの事で威力の制御が甘くなりオーバーキルになったが、俺を守ろうとしたのだからこの結果は上出来だろう。ちゃんと、攻撃される前に相手を倒せたのだから。



「ヤスーーゥ!?」

「馬鹿な、魔法使いだと!!」

「ぶっ殺せぇーー!!」


 魔法有りなら、俺はこのモヒカンよりも強い。

 そして三人娘は魔法抜きでも俺より強い。物理最弱の凛音ですら、モンスターの補正か何か知らないけど俺より腕力がある。夏鈴と莉奈は元から物理寄りだけど。





 俺の決断が遅かったために話し合いをする間もなく殺し合いになってしまった。


 降りかかった火の粉を払っただけ。

 そう言って終わればいいんだけど、これ、どうしようね?


 ゴブリン相手にさんざん経験したので、今さら人を殺した程度で動揺することもない。

 しかし新鮮な死体5つを前に、俺は途方に暮れるのだった。 


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