3-6 田舎者と名古屋
美濃も尾張も、入国関係は割とザルだ。
細かい審査はしないし、入国税を払えば身分証明に紙きれを1枚渡されて、それで終わり。
「商売しようってぇなら、もっと面倒だぞ。
ただのパンピー相手に細かい審査なんてしてられるかっての」
「犯罪者が紛れ込んだらどうするんだ?」
「そいつが国を出るまでに何もできなかった連中が悪い。馬鹿をした奴がいるなら、その時はこっちも相応の態度を取るだけさ」
手続きが楽なら、文句を言う事でもないだろう。
俺たちは特に何か言われることも無く、名古屋にたどり着いた。
こちらでは初めて訪れることになった名古屋の街。
そこは今まで以上に賑やかで華やかな場所だった。
まず、都市の規模が違う。
大垣市や岐阜市、途中で立ち寄った一宮・清洲もかなり大きかったけど、この名古屋には敵わないだろう。
人口何万人ではなく、何十万人いるんだろうね。そういうレベルだ。
ここにはマンションビルやアパートといった集合住宅がいくつもあり、人口密度を高くしている。
舗装された道路の上を多くの人が歩いているというのに、排せつ物の臭さが全く無い。おそらく下水道がしっかり整備されているのだろう。その処理場がどうなっているのかを考えるのは怖いが、街の部分が綺麗というのは、素直に凄いとしか言いようがない。
一定以上の知識に基づいた都市計画でインフラが整えられ、ここまでに見てきた都市とは一線を画すと言っても過言ではない。
なにより、街灯までしっかりと整備されているのには驚いた。何と、電灯があるのだ。どこかに発電所もあるかもしれない。
これまで見てきた街にそんなものは無かった。ここまで文明的ではなかった。
何と言うか、時代が一つ違う。
ただ、国として見るとちょっと微妙な話である。
ここまで通ってきた一宮や清州は、同じ尾張の国である。
なのに、そっちは岐阜などと同じような文明度合。つまり名古屋ほど発展しておらず、ここにある文明の恩恵にあずかっていないわけだ。
それは、国としてどうなのかと思ってしまう。
首都が大事で国の顔なのは分かるが、これは他の地域が離反しかねない巨大な格差だ。個人的に、そういう考え方は好きではない。
理解はできる。
だが、共感はしないし好ましくない。
俺は名古屋の街を見てこう考えた。
さっさと他所に行こう。
俺は愛知県の地理に詳しくないけど、海岸沿いに歩いていけば別の町があるだろう。
ここに長居すると、息が詰まってしまいそうだ。
人の多い、文明的な都市。
現代には及ばないが、近代レベルの街並みは、俺を無機質な目で見ているように感じた。




