+4 裏:水無瀬 裕
「力が欲しいか?」と聞かれて、欲しくないと言う人は、あんまりいないんじゃないかなぁ?
それがリスクの無いタイプの力であれば、尚更。
そこまで強くないけど、他の人よりそこそこ戦えるようになった僕、「水無瀬 裕」は、そんな事を思う。
今の日本、何処も彼処もモンスターだらけ。
安全な場所なんて、何処にも無い。
だから僕は、故郷を守るために戦わなきゃいけない。
自分が死ぬのも、周りの誰かが死ぬのも嫌だからね。
戦わなきゃ、誰かが死ぬんだ。
でも、現実は厳しい。
「配給、また減ったんだ……」
非番の日に国からのお知らせが届いたので内容を確認していたんだけど、また配給が減らされるという連絡だった。
今のご時世、国民に渡される食料は、かなり乏しい。少しでも無駄にしないため、配給制に切り替えられたのが、去年の話。
その時からお腹いっぱい食べることはできなくなったし、お肉も、ごく少数を除いて家畜が殺処分されたので、食べられなくなった。僕らが食べるお肉は、自分で狩った鳩やカラス、カエルとかだけだ。鶏、豚、牛のお肉は超高級品になってしまった。
……牛タン、また食べたいなぁ。
お魚も、最近はあんまり出てこないし。
海外から石油とかの供給もなくなったし、電気や水道なんかも止まってしまったので、生活レベルはずいぶん下がった。
生活はどんどん苦しくなる。
太陽光とか風力とか、水力とか。他の発電でなんとかならないかと思うんだけど、ダメみたい。
僕らの考えるようなことは偉い人なら分かっているだろうし、その人たちが無理だというなら、そうなんだろう。
そういうのに詳しい知り合いに聞いたら、レアアースがどうとか言われた。ああいうのにも、輸入している何かが要るんだって。
文明を維持するには、日本は狭すぎるみたいだ。
せめて、魔法使いがもっといれば良いんだろうけどね。無い物ねだりだ。
世界がこんな風になってしまってから現れた魔法使いは、何万人に一人という超レアな人材だ。
僕らただの民兵兼農作業従事者でしかない一般人とは、縁なんか無い。
僕も魔法を使ってみたかったんだけどね。
魔力はちょっとだけあったみたいだけどね。
その程度の人材なら、掃いて捨てるほどいる。
特別にはなれない。
噂では、魔法使いを使って人体実験をしているとか言われているけど。流石にそれは眉唾だと思う。
銃が使えなくなって、医薬品が足りなくなって。それをどうにかできる貴重な魔法使いを使い潰すなんて勿体ないこと、普通はしないよ。
でも。
僕の、この怪力になる能力って、どうやって見付けたの?
ちょっとしたお薬で手に入る、そんな簡単なものじゃないよね?
この国、本当に大丈夫、だよね?
もしも、そんな非道な事をしていたら。
たぶん、クーデターでも起きちゃうんじゃないかなぉ。