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半分生き残った。
半分しか生き残れなかった、ではない。半分も生き残ったのだ。
薄氷の上を歩くような状況だったのだから、これは運が良かったと言っていい。
しかし、準備無しで危険なところに踏み込むのは、二度とやりたくない。
俺の基本は、戦う前に勝利することだ。
入念な準備を整え、確実に勝てるようになってから動くのが最善だ。冒険はせず、勝利は掴まず拾うもの。
こんな、後ろからの圧力に負けて前に進むことではない。
寿命がずいぶん縮んだよ。
生き残れた仲間の顔ぶれを見ると、だいたいの仲間は揃っている。夏鈴に凛音、莉奈に終などはいる。
しかし春華など、俺の護衛の数名は逃げ切れなかった。途中で俺を庇うなどして、脱落してしまった。軍も1つ全滅、2つが半壊し、残りも無傷ではいられなかった。
被害は甚大と言えるだろう。
俺はとりあえずいつもの護衛だけ再召喚する。
軍の方は後回しだ。現状の戦力だけでも結構戦えるし、帰るときを考えると、身軽な方がいい。
帰ったらドンチャン騒ぎをするつもりなので、そのときに召喚すればいいだろう。
そう考えていると。
「お約束ネタではある。ボスが姿を変えて真の力を発揮とか。
でも、これは最期の悪あがき、だろうな」
疲れ果てた俺達の前に、広間で見た大蛇がやって来た。
どうやらこいつも無傷ではいられなかったようで、見た目はともかく、中身はボロボロのように感じられた。
なんとなくだけど、存在が薄いというか、弱っているようにしか見えない。
この場には、まだ仲間が大勢いる。
負けたりはしない。そんな確信がある。
俺はカード枠の関係で攻撃を控え、温存。
しかし他の仲間たちが魔法で攻撃を開始した。
肉壁の広間で戦ったときと違い、今度は見た目通りにダメージが通っているように見える。
攻撃がすり抜けるときいていたので色々と対策を考えていたが、そんなものは魔法攻撃以外に必要もなく。大蛇の体はどんどん削られていった。
人間部分は血を流すが、火の魔法がメインなのでそれもほとんど無い。大蛇の部分はそもそも血が流れていないように見える。
相手の苦し紛れの攻撃は、鉄壁軍が完全に防ぐ。足場の安定した場所なら、大蛇の体当たりぐらいは余裕で防げるようだ。飲み込まれないように、仲間と連携して上手く立ち回っている。
魔法で削り、盾で止め。
勝ち筋の見えた戦いは、最後だけあっさりと幕を下ろした。