3-2 遠征準備/テント
ちょっとした長期の旅行をするのであれば、相応の準備が必要だろう。
「正直、今の日本にある“国”って奴は信用できない」
「はーい! 私もそう思いまーす!」
テンション高めの莉菜を引き連れ、俺は尾張遠征の準備に精を出す事にした。
夏鈴ではなく莉菜なのは、ノリの軽さだ。夏鈴は子犬系で真面目系の性格をしているので、俺に意見するという発想が無い。その点、莉菜は思った事をストレートに表現するので、何か意見を聞く時は重宝している。
残る凛音は無口系というか、自己主張の無いタイプなので夏鈴同様こういったことには向かない。
「まず、テント。寝るところは大事だ」
「はい!」
材料になるのは、伐採した木材とカード化で作った鉄、あとは岐阜市で購入していた布類だ。
木で枠を作り、布をかぶせ、鉄の針で固定する。中にはマット代わりの毛皮を敷き、俺とゴブニュート3人娘が寝るスペースのある広さを持ったテントの完成だ。
持ち運ぶ時の事を考えないテントであればこれでもいいだろう。
「まずは『カード化』」
どんな大きさの物でも運ぶ事を考えなくても良い。それが『カード化』一番の利点だ。
さくっと1枚のカードにして、物を確認。
『簡易テント』:アイテム:☆☆:小:1日
木の枠組みに布を張っただけの簡易テント。風除けになるが、効果は怪しい。中に毛皮を敷いて居住性を高めている。
残念と言うか、当然と言うか。できた物は☆☆とランクの低いテントだった。
まぁ、雨対策としては効果無し、風除けとしても怪しいのであれば評価が低いのも当然だろう。褒められているのは毛皮を敷いた事だけである。
使っている布はただの麻布だからね。逆に通気性が良いと褒めて貰ったら反応に困るけど、視界を塞ぐ程度の効果しか無いなら、テントとしては期待外れだろう。
「防水を『強化』しておきますかね」
☆☆のカードの『強化』は3回まで。
そのうち2回を防水に回し、その副次的な効果で風除けとしても使えるようにする。
「虫除けは『煙玉』で良いか」
残る1回は地面との断熱効果を選ぶ。
暑い夏なんだから地面が熱を持っていくのは良い事のように思われがちだが、それは危険だ。床から熱を奪われると、夏風邪を引いてしまう。
体調管理を考えれば床の断熱は必須と言える。
「悪いが、莉菜はこれの性能テストを頼むよ。
寝る前には『氷塊』を用意するから、そこは安心してくれ」
「はーい!」
あとは莉菜の要望を聞き入れ、改善していくだけだ。
こうして俺はこの日の魔力を使い切り、翌日に小細工や小物持ち込みなどのちょっとした改善をしてからテントを進化させて「簡易」の文字を外すのだった。