-7
爆弾が爆発した影響は、最小限に押さえられた。
至近距離の鉄壁軍は少々吹き飛ばされそうになったが、それ以外に被害は出ていない。
これは空爆などでも使われる方法だが、大きな爆弾のあとに小型の爆弾を投下して、大きい爆弾の爆発に小型の爆弾の爆発で蓋をする事により、大きい爆弾の爆発をより効果的に地面の側に向けるというものだ。
同時に、大きい爆弾の爆発から爆撃機を守る効果もある。
爆弾を扱う以上、やらない手はなかった。
俺たちは肉壁の洞窟を、早足で逃げるように移動する。
走れば体力が持たなくなるかもしれないので、どれだけ気が急いても早足に押さえるのだ。あと、足場が悪いので、走ると危険というのもある。
俺が道の半ば、先頭はすでにエリアを変えていて、俺の到着を待っているところだったが。
「やっぱりかよ!?」
周囲の肉壁が蠕動して、縮まりだした。
これまで横に4mはあったのだが、どんどん狭くなっていく。
「≪バーストストリーム≫!」
この可能性を考慮していた俺は、本日二発目の『バーストストリーム』を撃つ。
隊の真ん中からでは射角が厳しいが、肉壁だって筋肉で収縮しているはずで、ある程度外れたところに撃っても効果は期待できる。
筋肉へのダメージは、撃たれたところだけでは済まない。もっと全体的に影響が出る。……人間なら。
俺は洞窟の脇を削り取るように魔法を撃ち、元の洞窟よりも広い道を作り出した。
壁が回復するまで、前回は10分はかかっていたので、逃げる時間は十分確保できた、はずだった。
たが、現実は厳しく、無情だった。
肉壁が削り取られ空いたスペースに足を踏み入れた誰かは、回復するための養分にされるのか、一瞬で取り込まれ、姿が見えなくなった。
傷口に触れるのは相当危険だったらしい。
前回はそんなことを試してもいないので、未知の反応であった。
肉壁の収縮は止まっておらず、傷口に投げ出される者が相次ぎ、俺がよかれとやった事は、被害を大きくするだけだったのだ。
準備が、実験が、まるで足りていなかった。
軽い絶望に襲われる中、俺の指先に、1枚のカードが触れた。
『オークゼルブ』
“あらゆる環境に適応する”そのカードを、俺は無意識に使っていた。
肉壁の、傷口に向けて。