-6
ダメージは通っているんだ。
大蛇の体に生えていた人間の体だけでなく、大蛇そのものも削られている。
だけど。
周囲の肉壁が、強く脈打った。
まるで心臓の鼓動のように。
「俺が使える魔法は『バーストストリーム』であって、『ストナーなんちゃら』ではないんだけどなぁ」
そして、大蛇が再生した。
人間の体部分も含む、完全再生である。
「旦那様、この状況に心当たりがあるのですか?」
「創様。これはいったい……」
うん。
よくある話だよね。
「この肉壁を含む、洞窟そのものが“幽暗の大蛇”という展開じゃないかな。で、どこかにある、“心臓”とかを破壊しないと駄目なパターンだよ。
あの大蛇はブラフ、いや、デコイじゃないかな?」
真ドラゴ〇の中で〇ッタードラゴンを倒しても意味が無いようなものじゃないかな?
とりあえず、この場で戦ったところで勝てそうにないかな。
あんまり頼みたくなかったけど、こういった事態は想定していなかったけど。うん、頼むしかないね。
俺は仲間たちの顔を見渡すと、軍の部下たちに「死んでくれ」と、お願いすることにした。
「とりあえず、爆弾で対処することにする。
大蛇の周囲にある壁ごと吹っ飛ばす。運が良ければ、壁の奥にあるかもしれない、心臓にダメージが通るだろうね。
運が悪かろうが、多少どころでないダメージを与えたのであれば、活動を鈍らせる結果になると思う」
この手の事に、作戦も何もない。
デカい爆弾で、この広間を爆破するだけだ。
幸い、空間は上の方がかなり広いようなので、爆発のさせ方次第ではあるが、通路に逃げ込む事で俺たちの被害を無くせるだろう。
……爆弾を爆発させるために、この場に残る連中以外は。
「構いませんぜ。また召喚していただきゃあ、いいんです」
「このままじゃあジリ貧です。やってやりましょうぜ!」
今回生贄役になるのは、『ゴブニュート魔法砲撃軍』の連中である。
ある程度か力がある連中でないと殿を務められないので、『ワクチン・オーク魔法軍』とどちらに頼むか迷ったのだが、彼らがその役目を負う事になった。
爆弾は空爆用に用意したものが多数あるので、在庫は十分ある。
広間のほぼ中央にいた俺はその場に大量に並べ、出口のあたりにもう少し置いていく。
中央で起こした大爆発を、出口付近の少量の爆弾で相殺するために小細工をする。
そして爆弾を置き終った俺は、仲間を引き連れて出口から逃げていった。
「すまん」
逃げ出してから、5分後。
最後の鉄壁軍のワクチン・オークが出口に潜り込んですぐ。
広間のあった方から、爆弾がさく裂する音がした。