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『バーストストリーム』の魔法で退路が確保できるかを確認。
光の奔流が肉の壁をぶち抜き、すぐには再生されない事を最低限の保険として、俺たちは前へと進んだ。
ああ、肉壁の再生速度を確認する為に、ちょっとみんなを休憩させておいたよ。
勿論、大半は一つ前の場所に居る状態でね。
流石に肉壁の近くで休憩するほど、俺たちは豪胆ではない。
「足場が悪いな。これは魔法寄りのメンバーを主力にして正解だったか」
「そうですね。戦えないとは言いませんが、不安定な足場での近接戦闘は十全に力を発揮できるとは言い難いはず。
春華さん、護衛の意見はどうですか?」
「仰る通りです。大地に体重を乗せられないことに加え、脈打つ振動が厄介ですね。最悪、我らは肉壁、ないしは囮か何かにしてください」
足場が悪い中を歩くが、草で隠された泥の上を歩いているようというか、水の上に置かれた板の上を歩いているというか。
とにかく、歩きにくい。ただ立っているだけでも相当疲れるだろう。
護衛の春華も、この状況下では力を発揮しきれないと言い、いざという時の対応、逃げるときの方法を口にした。
冥界で死んだときに、どんなペナルティが課せられるかは分からない。
何もないかもしれないが、もしかしたら、カードの力でも復活させられないかもしれないので、けっこう怖い。可能な限り、仲間を死なせないように立ち回りたいよ。
本当に、もう少し色々と試しながら、時間をかけて進みたかったな。
今度の場所は300mなどと言わず、かなり広い。
やや下りの肉壁の洞窟の中を進むと、少し広めの空間に出た。
天井が高く、手持ちの灯りでは照らしきれないほどである。この空間そのものは半径で100m以上はあり、俺たちは全員集まることができたし、ここならタイラントボアの召喚も可能だろう。。
この空間で目を引くのは、奥に居る存在だろう。
壁の中に多頭の蛇がいた。
胴体の奥は見えないが、出ている頭の周りは太さが直径1mはあろうかという、大きな蛇だ。
おそらく、こいつが『幽暗の大蛇』なのだろう。
多頭とは聞いていなかったが、間違いはないと思う。
いや、多頭と言うのは適切ではないか。
巨大な蛇の頭の近く。蛇の頭もあるが、そこから人間の上半身がいくつも生えていた。
途中で人と蛇に枝分かれしているようで、非常にバランスが悪い。
「まぁ、こういうオチは可能性の一つとして考えていたけどね。
いざ、実際にそうなってみると、けっこう堪えるな」
夏鈴が、春華が。いや、その人間の顔の一つを見た全員が声を失う。
口を開けたのは俺一人だけである。
「よう、俺。いや、『雄総 潤一郎』って呼んだ方が良いか?」
いくつもあるうちの一つ。その顔は俺と酷似していた。
『捕食封印』とか、聞いていた能力がアレだったもんなぁ。
カード能力のルーツはそれか。
わりと、へこむなぁ。