27-32 カードクリエイターの軌跡④
「今、村にいない連中も撮るか」
俺はふと、そんなことを思い立った。
カードの利用枠には上限があり、平時には常時展開できる戦力は厳選している。いざという時に頼りにしていても、村にはいない仲間も多い。
そんな彼らの写真がないのは不公平だろう。
そこで俺は、訓練で召喚したタイミングに写真撮影の話を持ちかけた。
「それならば、戦闘中の写真等を撮っていただくことは――」
「あ、それは無理。動いている一瞬を切り取るのは、まだできないんだ。ブレてしまうから、キチンと整列したときがいいな」
「そうですか。残念です」
訓練中の写真を欲しがられたが、そういった場面には、まだカメラが対応していない。
フィルム撮影になっても、動いている被写体が相手では、カメラマンの腕によってはボケた写真しか撮れない。
写真乾板の撮影では、まともに撮れないのは目に見えている。
そうして俺は、残念そうにしていても、いざ撮ってしまえば写真が形になれば驚き喜ぶ軍のカードの皆を撮影させた。
そうやって撮る対象を増やすと、さらに欲が出る。
今度は、神戸町の人たちだ。
あの人たちも、俺にとっては家族同然。写真に残しておきたい。
「へぇ。しゃしん、ねぇ。聞いたことはあるが、モノを見るのは初めてだ。
創、本当に俺らもしゃしんにするのかい?」
「あらあら。綺麗に、しゃしんにしてくださいね」
「へぇ。アンティークなカメラですね。スマホがあれば……って、プリンターもなしに写真は残せませんよね」
「オジキ! 俺らもいいんすか!?」
爺さんや、婆ちゃん。
それだけではなく、ニノマエで働く人たち。水無瀬少年。
こちらに出向中の、堀井組の若い衆。
彼らの写真も残していく。
ここまで来ると、更に更にと、足を伸ばす。
尾張、三河、仙台。黒岩の里や篠島。出雲には行かなかったが、足跡を辿るように、写真を取りに行く。
これまでの旅。やって来たこと。出会った人たち。
記憶を掘り返すような、再会の旅。
終わる頃には、随分な量の写真が手元に残った。