27-30 カードクリエイターの軌跡②
カメラを受け取った俺がやることはひとつしかない。
家族や、みんなの写真を残すことだ。
この世代の写真はかなり劣化しやすいのだが、幸いにもカードにしてしまえば劣化を気にしなくてもよくなる。たとえ100年先でも色褪せないだろう。
まぁ、100年先に見たいと思う誰かがいるとは思わないが。
……いや、夏鈴たちだとワンチャンあるのか?
カードモンスターの寿命はどうなっているだろう。
試験的に蝉の成虫とかをカード化して死なないのは確認したけど、ゴブニュートも死なないのかね。
夏鈴の外見年齢は、初めてストラテジストに進化したときから全く変わっていない気もする。清音の事もあるし、もしかすると……。
怖い考えを振り払い、俺は意識を切り替える。
10年先に、年をとった俺と、今と変わらない姿の夏鈴が並んでいたかもしれないが、そんなのはただの気のせいのはず、だ、よな?
うん。
気の迷いだ。
気のせいに決まっている。
村に戻った俺は、皆を集めて写真撮影を行うことを宣言した。
今のゴブニュート村は、人口約500人。
一回の撮影で全員を撮るのは現実的ではないし、やったら誰がどこにいるか分からないようなものになるだろう。仕事だって有るし、交代で撮る方がいい。
25人をひとつの単位として、20回に分けて撮影をする事にしようと思う。
先に何人かのグループを作らせ、その組み合わせで人数調整をする。
一部、枠に収まらなかったり足りなかったりしたが、厳密に25人に拘らなくてもいいので、そこは柔軟に対応した。
フィルム?
そこはコピーで対応したよ。
もちろん、俺は当然のように夏鈴と咲耶の3人だけの1枚も撮らせてもらう。
俺は村でも偉い人なので、特権を振りかざしてみた。
撮影が一巡りしたら、写真館のような施設を作ってもいいな。
利用するやつが増えれば、それだけ写真技術も発展しそうだ。
「創様。カメラを手の空いているゴブニュートに合成する?
カメラマンを用意するのも、いい手だと思う」
その前に、凛音がそんなことを提案してきた。
カメラマンか。それもアリかな?
言われてみて、面白そうだと思う自分がいる。
「なら、カメラの複製をさせるか。
カードなしの複製だけど、初期のカメラならなんとかなるよな」
俺はカメラをカード化したあと、分解して構造を調べさせ、技術者に複製させた。
航空機と違い、こちらは簡単に真似ができた。レンズ以外は。
レンズだけかなり手間取ったようだ。レンズの研磨はかなり難しいというから、仕方がないね。
じゃあ、複製したカメラを合成するかな。