27-28 居なくてもいい、居ると助かる
夏鈴と少し言い合いをしたけど、こちらから妥協案を示して和解した。
たまにはね、そういう事をしても良いと思ったんだけど。
話をした後の夏鈴。彼女がどこか気まずそうだったのは、「断られても構わない提案」を飲まれたとか、そういう事かもね。
提案したのは夏鈴なので、俺が要求を受け入れた事を「やっぱりいいです」と言われても通じない。
さて。ガトリング砲を作るために、どこから手を付けようかな?
カードクリエイターとしてのお仕事は、カードを作る事である。
カード化と、その後の『強化』や『進化』による開発がメインなのだ。
「創様。こちらの鉄、強度を上げてもらえますか?」
「ん。こっちに強化済みの鉄があるから、こっちを持っていって」
「おお。では、こちらの鉄はそのままお納め下さい」
石ころを鉄に変える、というのはもうやっていないが、鉄を強化して硬くしたり耐熱性を強くしたりと、そういった仕事がチマチマ舞い込む。
新しい何かを作るのではなく、今あるものを少し良くして、普通なら作れない物を作らせるのだ。皆が作れるものは、ずいぶん幅が広くなっていた。
最初から最後まで俺が手を貸す必要は、無くなりつつある。
「単発式の銃がこちらになります。
え? これを連射式に変える、ですか?」
「そうそう。円状に配置し、回転させて、こうやって――」
「お話は分かりましたが、再現は難しそうですね機械部品がかなり増え、要求される精度も高くなります。
あまり言いたくはありませんが、暴発する未来しか見えません」
「そこはこちらでどうにかするからさ。ある程度の形だけ用意してほしいな」
「言われればやりますが……お時間はいただきますよ」
「そりゃそうだ。試作品にそこまで安定性は求めていないから。まずは、叩き台になるものを用意してくれ」
銃火器は、火薬があるので一応作らせた。
近接戦に強い一部の仲間、終や春華あたりには全く通用しないが、連射できるようになれば有用な武器へと進化するだろう。
ガトリング砲もそうだが、三点バーストできる拳銃とか、機関銃とか、思いつく範囲でいろいろと教えてみる。
構造はそこまで複雑じゃないから、半分想像だけでいくつか図面を引いてみた。
撃った反動を上手く使うだけなので、構造はある程度予測できるんだよね。
問題は、机上の空論が現実にどれぐらい追いつくかって所だけど。
そこはもう、カード化によるゴリ押しをするだけなので、気が楽である。
わざわざ試射をしなくても、カード化した段階で不具合が見つかるし。俺の能力は検査要らずである。
「創様。火薬製造班から、増産の要求が増えすぎて対応できないと苦情が来ていますが……」
「人員を追加する。火薬製造班と、火薬草栽培班を3倍まで増やす。新人の教育もこちらである程度済ませておくから、それで乗り切ってほしい。
火薬を要求している部署には、増産体制が整うまで、もう少し抑えるように俺から言っておくよ」
「はっ! 火薬製造班、火薬草栽培班にはそのように伝えておきます」
ただ、やっぱり俺がいると余計な手間が減らせるわけで。
能力を活用する場面は、未だに減らない。
能力前提ではなく、能力を使えば楽になる部分だから楽にするよう使っているだけなので、頼りきりという訳でもない。ある程度は自活できているよ。
居なくても何とかなるが、居ると助かる。
それが俺の立ち位置である。