27-27 定常行動
目標を立てたら、必要な物や条件を洗い出し、それらを揃えるために計画を立てる。
「戦力の算出はこれぐらいか? いや、巫女ではなくゴーレムとか兵士を相手に――」
「巫女相手では、爆弾の量産が必要ですけど――」
「近接戦闘では勝てないからと言って、魔法使いを守る盾は必須――」
「いっそ、ガトリング――」
「空気に粘度を持たせ――」
必要な物と条件の設定は、人によってかなり違う。
巫女と直接相対した俺たちと、黄泉比良坂攻略を担当した夏鈴では持っている情報の場所と質が異なるため、それぞれが担当する物を決めるんだけど。
うん、完全に、青天井である。
お互いがやり過ぎではないかと思えるぐらい、「必要な物」を設定している。
準備期間は半年以上あるけど、本当にその時までに揃えられるか分からないレベルで、物を用意しようとしている。
たまに口を挟んでいるけど、こういった事で「譲り合い」はあまり起きないので、揉めそうな雰囲気ではあった。
このあたりはお互いが「現場を知らない上司」のような振る舞いをしかねないので、本当に必要だと言われれば用意するリストに加えておきたいんだけど。
逆に、「そこまでする必要があるのか?」「前回は要らなかったじゃないか」と聞いてしまうものも、数多く存在する。
それらの「目標」を時間、納期という現実に合わせて設定するなら、優先順位と最低限の目標値を設定するのだが、上と下で意見が食い違い、衝突する。
必要性に対するプレゼンを行い、その必要性を相手に理解させ、妥協点を探す。
俺と夏鈴の仲は良いが、命の懸かった話では、簡単に譲れないので、言い合いになるのも仕方がない。
計画立案での喧嘩は何度もしたけど、決定的に仲が拗れることはないとはいえ、あまり嬉しくない話だ。こればかりは、何回やっても慣れたりしない。
何回喧嘩しても仲直り出来るんだから、相性が良い、お互いを大切にしている。
そんな見方も出来るけどね、喧嘩はしない方がいいと思うんだよ。何も言わずに、お互いが求めることを理解し、喧嘩なしでの譲り合い。目指すべきはそこだと思うんだ。
そんなことを言いつつ、なんだかんだ言って、相手に譲らせてしまうのが俺なのだが。
夏鈴は夫を立てるところがあるからね。俺が折れる前に身を引いてくれることが多い。
俺のワガママの方が、よく通る。
……要は、俺が夏鈴をより理解して、相手の考えを理解し、尊重しなきゃ駄目という話だ。
まだまだ精進が必要である。