27-23 100年後に思いを馳せて①
清音に加え、美星、咲耶と。
ゴブニュート村には、俺以外に3人のカードクリエイターが存在する。
いずれも俺より若い娘さんらだ。
3人とも娘であることに、そのちょっとした偶然に作為のようなものを感じてしまうが、3人ぐらいなら神様のダイスが偏った結果だろう。そこまでサンプルが多いわけでもないし、気になるほどでもない。
カードクリエイターの能力が血で受け継がれる可能性を証明できたわけだが、更にその次の世代に能力が引き継がれるかが肝になる。
1世代限りの継承なのか、それともその次の世代までちゃんと引き継がれるのか。はたまた男のカードクリエイターの子供だけが血を残せるのか。
それは気になる所であるが、今すぐに証明できる話でもない。
俺が寿命で死ぬとして、あと50年以上ある。
この件は、それまでに知ることができるだろう。と言うか、それぐらいしないと分からない話だ。
たぶんだが、この能力は長く持たない気がする。
咲耶にまでは引継ぎができたが、その後は、たぶん、無い。
もしも血族として連綿と受け継がれていくような能力であれば、俺以外のカードクリエイターの血筋がもっと残っていても不思議ではないのだ。
それこそ、人類総カードクリエイター化も可能性としては有り得る。何百年後の話かは知らないけどな。
いや、もしかしたら、俺のように隠れ里を作り、そこに集まっているだけかもしれないけどね。
俺が知らないだけで、世界のどこかには――ってパターン。
俺の知っている世界だけが世界の全てではないから、色々とね、可能性に余長を持たせておこう。
話を戻すが、俺が始めたことを引き継ぐのは、咲耶で終わりという前提で物事を進めていくつもりだ。
俺の能力頼みでは、事業が今後どうなるかは分からないからね。
金属の作成とかはスミスらに任せているし、植物や薬品関係は莉奈がいる。あまり大きな問題はないはずだ。
動物も、チマチマと品種改良したものを世に放ったから、あとは現地の努力次第。
そうやって手を離れたことは良いけど、隠れ里とか、俺の存在を前提にした内容は、俺の代で形にしておきたい。
損切りも考えたけど、一度区切りをつければ問題ないわけで。だったら最後までやってしまおうと思う。
まぁ、防衛面がちょっと不安なんだけどね。
対人を想定した隠れ里なので、あの巫女のような存在を相手に隠れきれるのか、隠れ里としてちゃんと機能するかは微妙なところだ。
かといって、あの巫女を基準に防備を整えるのも現実的ではない。
せいぜい、西日本を避けて東日本に根を張るぐらいが限界である。
何にでも使えるカード能力だが、何でもできるわけではない。
現実を見て、取捨選択を迫られることは、今後も続くだろうね。