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2-26 田舎のヒーロー

 俺は自分の事を、文明人だと思っている。

 暴力を伴う力押しの解決、そういった手段を執ることもあるが、話し合い解決の方が好きだ。


 どんな事でも話し合いで解決できると過信するのは馬鹿だけど、話し合い解決を選択肢に入れないのは野蛮人だと思う。

 できれば、今回の件も話し合いで解決できる部分はそれでどうにかしたかった。


 解決以前に、無かった事になったのは予想外である。

 楽ができたと考えられれば人生楽しいんだろうけど、俺はわりと悲観論者でもある。

 何か裏があるんじゃないか、そんな風に疑っているよ。


 目の前の女性が信じられる人だろうが、そこは後ろに誰かいるかもしれないからね。

 出た結果を素直に喜べるほど、純粋な人間じゃないんだよ。



 ただし人を疑ってばかりで信用できないというのも、人としては不幸な事だと思う。

 そして一度すれ違いがあった誰かや、組織の誰かと揉めた事を理由に同じ組織の他の誰かを信じないというのも、偏屈すぎやしないだろうか?

 多少の不幸があったとしても、致命的な物ではない限り、寛容の精神を持つ事は大事だと思う訳だ。


 美濃の国を心から信じ切る事はできないが、買取店の女性店主とは、縁を持つ事にした。

 発言と行動は一貫して信用できるので、彼女個人は信用してみようという気になったのだ。


 もっとも、縁を持ったところで何をすると言う訳ではないけど、こちらは常識知らずの身だから。

 何かする時、事前に相談する程度の付き合いはするだろう。






 あと、細かい事を考えず、付き合いが続いているのが。


「いや、この辺の猪の繁殖速度って、おかしくないか?」

「ああ。俺らもここまで酷いとは思っていなかった」


 神戸町の面々である。

 俺は神戸町近辺では、時々やって来る猪退治のプロとして居場所を確保していた。



 普通なら猪狩りにもシーズンがあり、特定の時期、一番美味しいとされる冬の間だけ狩猟される。

 ただまぁ、俺の記憶と比較し人間の少ない日本の中では、獣の数はかなり多い。

 結果、年中本気で狩猟をしたところで獣害はあまり減らないし、もっと頑張った方が良いとなる訳だ。


 が、そうやって俺が一人で頑張ったところで猪の“圧”が全く減らないようなので、最近は疑問に思ったりしている。

 本当に田畑を守る効果があるのか、と。

 儲かるから、狩るけどさ。



「兄ちゃん! 今日は飲んで行けよ」

「そうそう、綺麗どころも用意してっからよ!」


 それに、彼らとの付き合いは楽しい。

 認めてもらえている感があり、必要とされているようで気分が良くなる。

 こう、旅人な俺でも社会の一員という気分になれるのだ。


 それはきっと、幸せな事だと思う。



 現状、俺は田舎でヒーローをしているのが楽しい。

 そんなところだ。

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