0-5 草刈り/名付け
しばらく座っていたけど、ケツが痛い。
地面じゃないけど、板の上に座っていたんだからしょうがないと思う。
座布団が欲しいな。
でも、綿なんて持っていないしなぁ。
布も無いし、裁縫道具だって無い。
なーんにも無いんだよ。
よし、草を刈ろう。
草を刈って、乾かして、クッションの替わりにしよう。
いや、ベッドにできるぐらい集めた方が良いな。今日は無理でも寝るときに柔らかい物を敷いておきたい。床に直に寝ると疲れが取れないじゃないか。
俺は一度外に出て、空を見る。
太陽は中天より半分ぐらいかもう少し手前か、そのあたり。今は昼の2時から3時といったところだろう。
しばらく作業をする時間がある。
俺は家の周りから水場までの草を刈ることにした。
で、刈った草を集めて今日は乾かすだけ。天気が良いし、明日の昼かそこらまで外に置いておけば乾くだろう。
風も無いから、吹き飛ばされてしまう事は無いと思う。
「ゴブリン――そうだな、名前を付けるか。いつまでもゴブリン呼びじゃあなぁ」
俺はゴブリンにも手伝わせようと思い呼びつけるが、ふと、こいつも名前が無い事に気が付いた。
俺は誰も名前を呼ぶ奴がいないからいいけど、このゴブリンはしばらく付き合うんだ。数も増えるだろうし、名無しじゃあ可哀そうだ。
ゴブ子、ゴブ美……ゴブリン族伝統の名前をぱっと思い出すけど、もう少し捻りたいな。
じゃあ……夏鈴で。
ゴブリンの、“リン”を取って、夏鈴。
うん、いい名前だろ。
「今からお前は夏鈴だ。お前の名前は夏鈴。わかったか?」
「キッ!」
俺がゴブリンに名を付けると、カードの表記が『ゴブリン(夏鈴)』に変わった。名前以外は何も変わっていない。強いて言うなら経験値がちょっと増えたぐらいだ。時間経過で。
……分かりやすくていいね!
こうなるとは考えておらず、こんなことが出来るとは知らなかった。
モンスターに個体名を付けると、カードに反映される。
便利だから覚えておこう。
ユニークになったところで、性能は変わらないけどね。
そうして俺と夏鈴は、太陽が照り付ける中、明日以降の為に草を大量に確保するのだった。