27-20 咲耶②
子供が増えるのはいいけど、ハイペースでは困る。
俺たちの、親としての経験値稼ぎとレベルアップが先だと思うのだ。周囲の助けがあるとしても、親として未熟なまま子供を増やすのは危ういと思う。
俺はリスクの面からあまり良い顔をしないが、夏鈴にだって考えがある。
「咲耶が大きくなってから子供ができたとき。それまで一身に受けていた愛情、と言うより時間でしょうか。それを下の子に奪われることになります。
その場合、姉と弟妹の仲が悪くなる原因になる、こいう話を聞きました。
ならばいっそ、2人は早い段階で産み育てて、姉や弟妹の意識を強く持たせ、仲違いがないようにと考えています」
夏鈴は、複数の子を持つ時によくある喧嘩の話を最も避けるべきリスクとして考えていた。
年が近ければ近いで問題は出るが、離れている方が問題になりやすいのではないかと、夏鈴はそのように考えていた。
年子であれば仲が良いとは限らないが、まぁ、そういった考え方もあるのだろう。肯定もしないけど、否定できるほどの根拠は俺も持っていない。
一般論による否定では、夏鈴も納得できまい。子育てが未経験なのはお互い様だ。
それに、子供はすでにデキている。
避妊を怠った俺が何か言うのも無責任な話で、拒みきれなかったのだから、今さらだ。
母体への悪影響に関しては、ジンを頼るしかないかな。
ただ、3人目には期間を開けてもらうぞ。
さすがに、10人とか大台を目指してはいないので、そんなハイペースで子を産む必要もないだろう。
俺は夏鈴に釘を刺す。
「はい、分かっていますよ。
体調が十分回復したと、お医者さんに言われるまでは、子作りを控えます」
一瞬、夏鈴の表情に良くないものが浮かんだ気がする。返事に淀みはなかったが、怪しい雰囲気だ。
たぶんもなにも、納得していないのだろう。注意しないと駄目だな。
それにしても、夏鈴が子を産むことにこだわる理由。それに嫌な想像をしてしまった。
もしかしたら、俺が殺されるかもしれない可能性。
大蛇の巫女の逆襲を受け、負ける未来。
その前に、俺の忘れ形見として、子を望んでいる……無いか。
俺はほんの少し考えてしまった、嫌な考えを振り払う。
思い返してみれば、夏鈴が子供を欲しがるのは以前からだ。最近の話ではなかった。
なら、そんな物騒な未来を前提にするはずも無い。
……無い、よな?