27-19 咲耶①
俺には娘が一人居るわけだが、一人だろうと、子供の面倒を見るのは大変だ。
そこら中をハイハイで動き回り、気を抜くとどこかに姿を消してしまう。
歩き出せばさらに大変になり、一瞬たりとも気が抜けない。
夫婦2人で子育てというのは、現実的ではないのだ。
なのに、俺にはその仕事があまり回ってこない。なぜだろう。
そんな時に頼りになるのはご近所さん。
あと、同居人と護衛一同。
俺たちだけで届かない手を、代わりに伸ばしてくれる。
「さ、咲耶様。そちらに行ってはいけません」
「あう?」
生後半年と少し。
咲耶はハイハイから二足歩行に成長したため、広がった行動範囲に手を焼くことが増えた。
この子はかなり行動的で、隙あらばドアの隙間に身を潜り込ませ、外に出ようとする。
春華たち護衛は優秀だが、俺の子供という遠慮があるので、どうしても厳しい態度をとれず、出し抜かれそうになる。
困ったことに、護衛のみんなも子供に慣れていないんだよね。
「これは、育児を護衛の仕事に加えるべきかな?」
「私たちの傍に居るのだから、できないと困りますね」
最近、夏鈴は機嫌が良い。
巫女の件が中途半端に終わり、ロクに対策もできない。
そんな状況ではあったが、長く続いた休暇の期間中に、第二子を懐妊していたことが分かったからだ。
まだお腹に変化は無いが、とても幸せそうである。
余談になるが、美星を養子にする件だが、これに夏鈴は賛成していた。
ああいった希少な能力を持っているので、カード化しただけでなく、もっと強い繋がりを作っておいて損はないと、打算による判断で。
ただ、ちゃんと愛情を注げるかどうかは分からないし、親子になるのが本当に良い結果に繋がるかは分からないとも言っていたが。
とても(夏鈴の)手がかかる子育て。
2人目が生まれた場合、さらに大変になるのだが、夏鈴はもっと子供がほしいと言っている。
俺自身、ひとつの家庭に子供は3人か4人が妥当と考えているが、「面倒を見きれるのか?」と、そんな懸念があるので、そこまで急いで子供を作る必要はないと思っている。
人数的な面での意見が一致しても、出産周期の意見が一致していなかったのだ。
この件では、少し揉めている。
明るい家族計画は、人数だけの話ではない。
もっと、細かい部分まで詰めておいた方がいい。
連続して出産するのは、母体に負荷がかかりすぎるんだけどな。
夏鈴には、もっと自分を大切にしてほしいよ。
こんな事で再召喚とか、勘弁してほしいんだからさ。