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カードクリエイターのツリーグラフ  作者: 猫の人
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27-14 清音と美星④

 フォローをするわけではないが、正義マンのいっている事が完全に的外れかと言うと、そういう話でもない。

 確率は低いと思うけど、今の清音がある程度我慢する事で、二人の関係が劇的に改善する可能性も有るには有るのだ。


 しかしそれを言うのは、清音本人か、それとも清音のお相手か。

 それ以外どころか、何の事情も知らずに自分の正義を押し付けるだけの自己満足野郎が安易に言っていい話ではない。


「俺は、被害者と加害者の言い分では、被害者に肩入れすると決めたんだよ。それが犯罪行為でもなければ、協力しようってね。

 だから清音の意思を尊重する。その意思を阻むのなら、俺がどうにかする。

 言いたい事を言うだけで何の責任も負う気の無いのが、ゴチャゴチャと口を挟むんじゃないよ。

 それと、ここの所長として警告するよ。これ以上この件に口を挟むのであれば、今すぐにでも出ていってもらうからな」


 俺はこの爆弾開発研究所のスポンサーであり、所長である。

 つまり一番偉い俺の言葉に逆らうのであれば、正義マンには相応の覚悟を決めてもらう事になる。

 俺は相手の言葉と行動に芯があるのか無いのかを確認する意味でも、揺さぶるような事を言ってみる。



 すると、正義マンは思った以上に“ぬるい”切り返しをしてきた。


「何を言っているんだ! 家族は助け合うものなんだぞ! すれ違っているなら、誰かが手を取り、繋げてやるのが人情というものだろう!

 幼い子供の(・・・・・)した事に(・・・・)、いつまで腹を立てているのかは知らないが、ここは年上の余裕を見せるべき場面だろう?

 だったら、更に年上である僕らが! ここは背中を押してあげる事こそ、立場に見合った振る舞いではないか!!」


 俺の警告を無視して、正義マンは持論を展開している。さすがに頭が痛い。人の話を聞かないにしても、これは酷い。


 このバカは、何を言っているんだろうね?

 さすがにもう、俺は付き合いきれないと判断した。


「人の警告を、ここまであっさりと無視するとはね。

 分かった。そんなに出ていきたいなら、今すぐ出ていけこのバカ野郎」


 ちゃんと先に警告したにもかかわらず、それを無視して「僕の考えた幸せな家族のカタチ」を押し通そうとする姿勢に、俺は呆れるしかない。


 これが、俺に追い出されることを理解しての発言であればもうちょっとマシな対応をしようと思っていた。

 しかし結果は「自分の言葉は正しいのだから、周りは言う事を聞くべき」という、斜め下の発言だ。擁護のしようがない。


 俺は親衛隊の一人に目配せすると、正義マンを追い出す手続き(物理)を始めた。

 アホらし過ぎだ。

 会話するだけ時間の無駄である。





「創様。ありがとうございました」


 正義マンを追い出すと、清音は深々と、俺に向かって頭を下げた。

 俺はその感謝を、半分だけ受け取ることにする。


「どういたしまして。

 でも、俺はここの所長で、あの馬鹿は俺の審査を通ってここに来たクチだからね。一応は上司として、責任を取らないといけないからさ。

 他にも、何かあれば言ってくれればいいよ。できる範囲ではあるが、ちゃんと助けるから」

「創様……」


 感謝を受け取り、多少の謙遜を見せた俺に、清音は潤んだ目をしてこちらを見た。

 他に好きな人がいると知らなければ、勘違いしそうなシチュエーションだよな。俺はちゃんと知っているので、勘違いなどしないけど。



「創様は、どうお考えですか?

 その、私は美星と仲良くするべきとか、仲良くしてくれればいいかな、とか」

「え? まったくそんな事は考えていないよ。血の繋がっただけ(・・)の相手と、それだけを理由に、なんで仲良くしなきゃいけないんだ?

 血が繋がってなくても、仲良くできる人とは仲良くできるよな。もしも他に仲の良い人が全くいない様であれば、家族との仲をどうにかした方が良いかもしれないけどさ。そうでないなら、家族に拘る理由も無いだろう?

 人には相性がある。相性の悪いのと、わざわざ無理をして付き合う必要も無いよ」


 何かあれば、と言った俺に、清音は一つの相談をしてきた。

 自分は、美星と仲良くするべきなのだろうか、と。


 俺はそれに対し、「必要は無い」と返した。

 清音は他の人と仲良くできるタイプで、自分の殻に篭りきりになる性格ではない。

 なら、そういった人と、ちゃんとした縁を結べばそれで良いじゃないか。

 俺は問題無いと、笑ってみせる。



 第一、無理をして、その反動で余計に仲がこじれる事もあるのだ。

 あくまで可能性の話だが、今は無理をしなければいけない場面ではない。


 なら、自然に、何時か顔を合わせても気にならなくなるのを待った所で責められる謂れは無いだろう。



 人間、どうあっても仲良くできない誰かがいるのだ。

 清音の場合、それが美星だったというだけである。

 それぐらい、笑って受け入れればいいじゃないか。仲良くしたいと願う美星以外は。





 俺が軽く笑い飛ばすと、清音はどこかホッとした表情を浮かべた。

 良い傾向だ。今の清音を、美星の件で追い込みたくは無いからね。


 せめて、美星の名前が出た時に、顔が強張らないぐらいまでは見守ってあげたいな。

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