27-10 気が付いた変化
「それにしても、ちょっと拙いかもしれない」
「はぁ。何が拙いのでしょうか?」
俺と夏鈴は夫婦である。
そして、子供ができた、子供ができるような事をしていた。
これが結構前の話。
しばらくご無沙汰だった訳だが、子供ができたのでしばらくお預けだった、夜の営みが再開された。
夫婦なんだから、そういう事もするんだよ。
俺はあまり性欲が強くない方なので、しなくても大丈夫だったんだけどね。
ただ、久しぶりにシテみて、思う。
「性欲が強くなったかもしれない」
「……良い事なのでは?
久しぶりだから、というのもあるかもしれませんよ。あとは、死にかけたので、生存本能が刺激されたのかもしれません。
大穴は、温泉の効果ですね」
「いや。たぶん、種族的なものだと思う。
あと、温泉は無いだろ。あれから何日たったと思ってる」
「冗談ですよ。
それにしても、普通は、強い生き物の方が繁殖能力が低くなるものですよね。性欲に反比例する物だと思いましたが。
神様を殺した反動で、弱くなったのですか?」
「さぁ? これと言って、実感はないけど。弱くなったという事は無いと思うな」
以前より、俺の性欲が強くなっている気がする。
一概に悪い事ではないけど、これが神殺しの反動かと思うと、なんとも微妙な気分にさせられる。
「そういえば、黄泉比良坂で暴れたのですし、岩の門を閉じたのだから、旦那様は伊邪那岐のようなものですよね。
そう考えると「1日1501の子供を作ろう」と言った伊邪那岐の加護などで、子供を作る能力が高くなったのかもしれませんね」
「そうなると、別れた嫁、伊邪那美は大蛇の巫女か。黄泉比良坂で言葉を交わしたのが最後で、二度と会わないって流れになるなら歓迎したいね」
夏鈴はどちらかと言えば子供がたくさん欲しいタイプなので、もしそうなら嬉しいのだろうね。本人の願望もあり、そんな冗談を口にした。
幸せそうにお腹をさする姿に、男としてはちょっと微妙な気分にさせられるけど。
流石に、したばかりではできないって。口にはしないけどさ。
その冗談に対し、俺としては、あの巫女には二度と関わりたくないよなって思うだけだ。
思わず口にしてしまったので、夏鈴は俺を恨めしそうに睨んでいるけど。
……ピロートークで、他の女の話題はアウトだったな、すまん。
だが、そこで夏鈴の名前を出すのもNGなので、話題選びに失敗したとは……うん。俺が悪いね。ごめんなさい。
「子供は、何人作りましょうか? 多い所では10人以上という所もあるそうですけど」
「3人か、4人? それぐらいは欲しいね」
子供ができる事を、夢のある話と思うには、俺は擦れている。
子育ての苦労とか、そういうのが分からないわけではないからね。
生まれてきた子供に「ありがとう」と思いはするけど、子だくさんを無条件に歓迎するのは無責任だと思って、心がストッパーをかけてしまう。
子供がたくさんだと、一人一人にかける時間が少なくなるし、愛情を注ぎきれるかと考えてしまう。
このご時世なので、子供の数は少なくとも3人以上が望ましいんだけどね。それでもさすがに、二桁は作り過ぎだと思うので、軽くけん制しておいた。
明るい家族計画は大事なんだよ。金銭的に不自由していないとはいえ、愛情という名の時間は有限なんだからさ。
余談ではあるが、人の生存圏はモンスターの脅威にさらされているため、男手が減りやすく、事実上の一夫多妻制が合法なんだけどね。
子供が10人以上とか、嫁が複数の人の話なんだよ。
俺は、そういった事に付き合いたいとは思っていなかったりする。
夏鈴も嫁を増やすことに否定的なので、子供は3~4人が妥当なんだよ。
他所とウチは事情が違うので、子供10人を一人で産もうとか考えないでね。