27-7 神殺しの代価、報酬④
「魔力というものには種族ごとの特徴があるんですよ。魔力の流れ方、波長とでも言うべき部分に、種族固有のパターンがあるんです。
人間、ゴブリン、ゴブニュート、ニューマン。私が診てきたいくつかの種族については、明確な差があり、それを勘違いするという事はありませんね。
ここまで言えば分かってもらえたと思いますが、創様のパターンは、人間のものではありません。以前お会いしたときは、間違いなく人間でしたけどね」
ジンは真剣な顔で、訥々と説明を続ける。
「それと、創様のカード進化によるパターンの変化。それにもいくつか癖のようなものがありまして。
ゴブリンからゴブニュート、ヒューマンからフリーマン。そういった変化をした場合、このパターンの変化はあまり大きな変化が無いと言いますか、元の種族のものを引き継ぐんですよね。
おそらくも何も、近しい種族であれば進化の系譜が辿れるようになっているんです。ゴブリンからゴブニュートを辿るのは簡単ですが、ゴブニュートとゴブリンの差異は、ゴブニュート側にパッチワークのような部分があり、どちらが元になった生き物かが辿れるようになっていますね。
しかし、創様の種族変化はかなり大掛かりで……元人間とは、思えません。
この魔力パターンで種族を認識する技術は、誰でもぱっと簡単にできる事ではありませんし、外でバレることは無いと思いますが……私と同レベルで魔力を見ることができる人間がいた場合、分かってしまうでしょうね」
何処か、何かを危惧するような顔で、ジンは大きな説明を終えたとばかりに大きく息を吐く。
そうして表情を明るめに直し、こう付け加えた。
「種族が変わったところで、体の方に大きな悪影響があるという事は無しでしょう。いきなり吸血鬼になって、日光を浴びれなくなったといった事もありませんし。臓器の機能も、人間と同じようですよ。
大蛇の巫女を殺したわけですからね。蛇に近い特徴を持ってしまったかもしれないので、そのあたりはご自身で調査してください」
ジンは本当に、何でもないことのように種族的な特徴を付け加えた。
臓器の配置、形状に変化はないので、基本は人間と同じ様だと断言する。
実際、今日まで飲み食いや排泄といった事に変化は無いので、生き方などに変わりはないだろうけどね。あまりにも簡単に言われたので、大したことはなさそうだという気分にさせられた。
多少は気力が戻り始めているのか、気分が乗ったので軽く調べてみたけど、以前と比べ、ちょっと熱いのや冷たいのに耐性が付いていたぐらいだ。
他は身体能力や魔力が上がっているかな、そんな小さな変化が見られただけだった。
この変化は誤差のレベルで、単純な成長とあまり変わらない。
付いた耐性も、風呂の湯の温度調整に失敗しても以前ほど気にならない、そんな些細なものなのだ。
風呂の湯については「ちょっと鈍くなりましたね」と夏鈴に複雑な顔をされたけど、致命的な話でもない。沸騰するお湯には、当たり前だけど耐えられないからね。その半分だって無理だし。
大きな問題は無い、俺は種族が変わった事を、軽く流すのだった。
そうやって流すことが、異常だと考えないままに。