27-6 神殺しの代価、報酬③
人、それを「手遅れ」と言う。
「魔力の変質、もう安定期に入りつつありますね。終わっています。
これまでの体調不良……気力不足は、もう何もしなくても回復していくはずでしょう」
「つまり?」
「何も出来る事がありません。
もう少し早く来てもらえれば何とかなったかもしれませんけど……今はもう、何も出来ませんね」
ジンはお手上げと、俺の症状はなんともならないと降参した。
思わず文句を言いそうになったが、俺だって何もできないのだから、言ったところで無駄である。
だが、本当に何もできないのかと、少しだけ確認をする。
「ちなみに、魔力の変質とかどうやって対処するんだ?」
「魔力の異常はそこそこある病気ですからね。魔力を回復させる、消耗させる。体内の巡りに干渉して使い難くする、使い易くする。そういった治療がメインですね」
意外と思ったが、魔力の病気は色々あるらしい。ジンは淀みもなくスラスラと俺の質問に答えた。
「魔力の多寡がどう影響するのを診て、そこから処方するのが一般的な治療になります。
ちなみに、先程の診断は私の送り込んだ魔力にどのような反応を示すかを診ています。何も反応はありませんでしたけどね」
ジンは「ちゃんとやっていますよ」とアピールするように、診察についても説明してくれた。
いや、俺だって魔法は使えるし、魔力の働きは分かるからね。何をしてたか、それぐらいは理解しているよ?
ただ、治療って本当に出来るのか、それが不安だっただけで。
「薬は、回復薬と同じような、魔法を用いたものを使います。
あまり一般的ではないので、お高いんですけどね」
最後に、ジンは使うかもしれなかった薬を持ってきた。
「カードにしても良いか?」
「ええ、勿論。コピーして、何かいい薬が出来たら、こちらにも回してください」
「ああ。それで頼む」
回り道のような会話。
これは、俺が覚悟を決めるための時間稼ぎである。
本題はここからで、「俺に何が起きたのか」を教えてもらうことになる。
実はもなにも、俺は結構怖がっている。
魔力が変質した、それがどの様なものなのか。あまり聞きたくない話なのだ。
確認するのは怖いし、聞きたくもないが、聞かなくても何が起きるのか分からないので、怖い。
ジンの顔を見る限り、あまり良い変化ではなさそうな気がする。
断頭台に繋がれるような間が空いて、ジンは厳かに言う。
「創様。
貴方はもう、人間ではありません」