27-5 神殺しの代価、報酬②
違和感など無い。
それが俺の考えだった。
「魔力的には異常だらけ。創様本人でないと言われた方がしっくり来ますね。
本当に自覚症状がないんですか?」
「へ?」
だが、久しぶりに俺を診察したジンは、アッサリと「異常アリ」と断言した。
「魔力が徐々に変質しているようなのと、それが今も続いている感じですね。外から違和感を感じさせない擬装がされている? 夏鈴たちもまとめて変質して、気が付かなかったのかな。
でも、魔力の変質に合わせて人格に影響が出始めているから、周囲の違和感を拭いきれなかった。そんなところでしょうね。
ああ、夏鈴もあとで診察するので、連れてきてくださいね。そっちのお嬢さんも、念のために診ておきましょうか」
久しぶりに会ったというのもあり、ジンは俺が本人かどうか分からないレベルで変わっているという。
「こういうのは私だって初めてですからね。何があったのか、ちゃんと話してくださいよ」
ジンは医者として、俺に真剣な目を向けた。
「単純に、殺させるのも目的のひとつだった、そういう事では?
実は神様の一柱だったんでしょう。神様を殺せば、そりゃあ何が起きても不思議はないですね。
『捕食封印』の逆で、『披殺憑依』でしたっけ? そういった、殺される事で相手を乗っ取る魔法使いは結構いたはずですからね。
今は乗っ取られている最中で、創様の人格が歪み始めているとか?」
「冗談じゃない! そんな事は認められるか!!」
「可能性としては、無いとは言い切れませんよ。確定した話でもありませんけどね。
ま、落ち着いてください。現状をきちんと把握し、対策を講じなきゃいけませんからね」
ジンは、中々に凶悪な思い付きを口にした。
可能性の話、未確定の情報ではあるが、そう言われると、かなり不安になる。
しかしジンは冷静で、今度は俺を落ち着かせるための、受け入れやすい可能性を口にした。
「強いのを殺して、ゲームのようにレベルアップした、だけかもしれませんけどね。急激なレベルアップに体を馴染ませている最中だとか。
あとは、神を殺した因果を得たことで、そういう立場になった、だけかもしれませんけどね。
称号を得た、神様に注目されるようになったとか。そんな可能性もありますよ」
「ああ、うん。そういった可能性もあるよな」
今の世の中ではコンピューターゲームなど残っていないが、一般庶民の娯楽として、ウォーシミュレーションやテーブルトークRPGは生き残っている。
ジンはそれらを例として挙げ、可能性を示唆する。
嫌な話のあとに明るめの話をされ、俺の心も少し落ちついた。手のひらで転がされているようだが、細かいことだな。
どちらにせよ――
「では、もう少し診察を続けましょうか。
何故そうなるのかが判れなくとも、何が起きているか判れば、手は打てますので」
「頼む」
なんとかなると信じて、診てもらうしかないよな。