27-4 神殺しの代価、報酬①
先の事は、先の事。
日常に帰ってきた俺たちは、平和な一時を堪能する権利がある。
つまり、頑張る目標は決めたけど、適度に力を抜くべく、しばらくダラダラ過ごすつもりだ。
ダラダラすると言っても、魔力を無駄にはしないからね。全くの穀潰しにはならない。
たまにはそこそこに働き、疲れを癒すのも大事なのだよ。
ダラダラ生活の最初、俺は春華に魔法の剣を作ったりしながら、そんなことを考えていた。
村でのダラダラ生活、7日目。
ダラダラ生活が続くと、普段ならさすがに「そろそろ働こう」という気分になる。
だが今は、普段よりも長めの休暇を堪能したにも関わらず、俺はまだ働く気にはならなかった。
なんと言えばいいのか、自分でも上手く言葉にできないが、気力が湧かないのだ。
「死にかけたからか? 普段よりも危ない目に遭ったからなぁ。
なんだろう? 本気でやる気が起きない」
俺はこの無気力状態を、準備不足で危ない目に遭い、死にかけたからだと考えていた。
また何か目標を立て、動き出す前の段階というより、暇と言いつつなにもせず、宿題を溜め込む小学生の夏休みのような状態だ。
きっと、切羽詰まらないと動き出せない。
「旦那様。体の調子はどうなのですか?
もしかして、体調が優れないとか、そういったことはありませんか?」
「んー? 体調は悪くないし、魔力も以前より増えているし、体の不都合は無い、と思う。
自分をカードで見れないのは、こういった時に不便だよねぇ。カードで見れるのが便利すぎるってだけなんだけど」
「一度、ジンの所で診てもらいませんか? 旦那様に何かあっては、みなが心配します」
「健康だと思うんだけどなぁ」
肉体的、魔力的に不調はない。ジンに診てもらっても、何もないはずだ。
だが、夏鈴はとても心配しているので、俺は夏鈴を安心させるためだけに、岐阜市へ行くことになった。
死にかけた反動で緊張の糸が切れ、長めに休暇を取っているだけ。
7日程度なら、変な話でもないよ。
子供の頃の夏休みなら、一月半も休みが続いていたんだから。それに比べれば、7日なんてまだまだ短いし、慌てる話ではない。
そもそも、医者というより、必要なのはカウンセリングだろうね。やるとしたらメンタルケアだよ。外傷は無いんだからさ。
このときの俺は、自分の無気力をその程度に楽観視していた。
温泉に浸かっていた期間も合わせて10日ほど休みを取った事に、なんの違和感も感じておらず、これまでの自分を思い返しもしない。
何よりも、周りの人の事を省みず、帰ってきた報告などすらしていない事を、不思議と思わない。
自分の“らしくない”在り方が、どんな目で見られるかを考えもしていなかったのだ。