27-3 作ってみた
雷を纏った武器や盾を作ってみたけど、欠陥品としか言いようがなかった。
「戦闘中だけ、帯電するならいいんだけどね?」
「切り替え用のスイッチがないと……使えないですね」
まず、盾は論外だ。
盾を常時帯電させた場合、どうやっても周囲に悪影響が出る。
出力を高くしていたというのもあるけど、自分の武器やその他の金属装備と通電し、自爆してしまうのだ。近くに仲間がいれば、その仲間にもダメージが入ってしまう。
持ち手のところだけ絶縁しても意味がない。無駄に火花を撒き散らし、邪魔なだけであった。
スタンガンなどは、電極の間で放電しているから大丈夫なんだよね。
無制限に放電するような装備は使えない。
それが分かっただけ、収穫はあったのだろう。
なお、無駄になった装備品は、発電機として再利用している。
頑張って発電機を作った俺としては、微妙に納得がいかないというか、最初からこれだけ作れば良かったんじゃないかと複雑な気分である。
「ご主人様。ならば、凍る刃の剣はどうでしょう?」
「鞘の周りが凍り付いて、剣が抜きにくくなるのに一千万ジンバブエドルを賭けたい気分だよ。他にも欠点は思い付くね。
まぁ、凍り付いたぐらいなら力任せに抜けるだろうし、作ってはみるけどさ」
雷が駄目なら、氷を使う。
春華はそうやって食い下がるが、それもかなり欠陥装備になるだろうことが最初から予測できた。
やらずに納得するのは難しいだろうし、これも経験を積ませるためってことで、一応は手を貸すことにした。
「残当」
「これでは剣ではなく、鈍器に……」
氷魔法の剣は、刃に霜が付いて、切れ味の悪い剣になった。
剣は重量で潰し切る武器だけど、霜のせいで鈍器に近くなっている。時間が経てば氷で覆われるようになる。
あと、生き物の体に刃が通っても、途中で凍り付き、くっつく。
残念ながら、当然の結果だ。
「熱を持たせるのは……どうなるのでしょうか?」
「そこで思い止まれて良かったよ。付き合った甲斐があった。
でもたぶん、一番マシな結果かな? 鞘の断熱をしっかりするのと、熱膨張をどうにかするのと、剣を抜いたあとの排熱さえちゃんとできれば、って注釈がつくけど」
基本、常時熱い剣を作れば、鞘の中に熱が籠る。
中の熱を柄の方に出すようにすれば、柄が熱くなって握れなくなるだろうね。そうでなくても、室内なら部屋が暑くなって終了だ。
排熱を行わないなら、中で空気が膨張して破裂するだろうな。
「その、鞘の方を常に冷却すれば、相殺できるのでは?」
「まぁ、それは可能だけど……一番の問題は、熱で刃が駄目になるかも、って事なんだよな」
当たり前だけど、剣などの金属装備とは、熱して成形するものだ。
熱くするというのは、刃を柔らかくすることなのだ。つまり強度が下がるので、武器としては微妙になる。
専用の金属を用意できれば、この問題は解決できる。
ただ、そこから更に別の問題があるわけで。
「ちなみに、戦ったあと、どうやって手入れすればいいと思う?」
「あ」
電気なら絶縁すればいい。
冷たくてもなんとかなる。
けど、高温になった金属の刃は、どう手入れすればいい?
魔法の剣とは、かくも使い勝手に難があるものなのだ。
試行錯誤、やってみては失敗作を積み重ねていく。
俺のカードの中に、既に「炎の魔剣」などがあるとか、そんな事は無い。
無いったら、無いのだ。