27-1 反省会
「ただいまー。温泉よりも、やっぱり我が家だよな」
「説得力がありません……」
俺たちは、出雲の国での戦いの後、ゆっくりと有馬温泉と下呂温泉を堪能し、それから村に戻ってきた。
酒を飲んでどんちゃん騒ぎをすることは無かったが、心の休養はできたと思う。
急遽決めた温泉旅行を堪能して幸せな気分に浸っていたが、帰ってみるとそれはそれでホッとするものがあり、あの戦いの後とは違うが、俺は体から力が抜けるのを感じた。
混浴をしたので、温泉を堪能していた時の俺を知っている夏鈴の言葉が冷たいが、それはそれ、これはこれだ。家に帰ってきた時のホッとする感覚は、他に代えがたいものだと思うよ。
家に帰ってきた俺は、開く荷物も無いので、そのまま寝室に行って横になるのだった。
今回の戦いは、最初は巫女の後を追い、その息の根を止めるためのものだった。
ただ、その途中で黄泉比良坂に施されていた封印を解いてしまい、現世と冥界を繋げる大失態を犯した。
それに加え、俺が赴かなければいけないほど敵が出てきて、収拾がつかなくなってしまう。
再封印の為に現地入りしたが、逃げ隠れするはずだった俺は巫女に追われ、良いようにやられ、夏鈴が来るまでじわじわと嬲られている。
もう少し戦う手段はあったが、どう考えてもあのままであれば俺は殺されていただろうね。それほどの完敗だった。
「今後も、生き残るために、戦力の拡充と戦場における俺の運用について、もう少し考えておく必要があるな」
生き残ったのだから、もう大丈夫。とはならない。
巫女はまだ生きているだろうし、今度こそきっちり殺し、この生存競争に勝ち抜かねばならない。
巫女は俺が脅威と成り得ると考えただろうから、きっとまた襲って来るに違いない。
今回は何とかなったが次回も何とかなるとは限らないので、反省をして、敗北の経験を次回に活かさねばならない。
反省会。
冒頭に俺の口上を聞かされた夏鈴と春華は、分かりやすく落ち込んだ。
凛音、莉奈や終は特に変化が無いけど、それは立場や役割の差だろうな。
夏鈴は全体の統括で、戦術における最高責任者。
春華は俺の護衛で、古株の親衛隊よりも戦闘能力が高く防御が得意という事で、一番の護衛である自負があった。
どちらも「今回は運良く生き残った」という認識なので、自身の至らなさを痛感しているのだろう。
もっとも、能力が足りている仕事だけをするなんて、相当な幸運に恵まれない限り、普通はないんだ。誰もが、足りない能力の中で必死に足掻いている。
その“至らない力”を埋め合わせするために、頭を使い、人を頼り、物で補う。
そのためにも、どこが悪かったのか、どうすると良かったのか、後出しジャンケンのような視点で考えよう。
後からなら好きに言えるし、最善策も思い付くだろうさ。