26-24 切り札④
捕食封印は、ある程度広めの平地に魔法陣を描いて行う封印魔法だ。
俺たちがいるのは、けっこう細めの獣道。条件として合致しない。
「≪地形展開≫『封印の魔法陣地』」
だったら、条件に合うよう、土地を変えれば済む話だ。
『平地』のカードに『魔法陣』を合成した地形を展開し、一瞬で準備を整える。
「これは!?」
「見覚えがあるか! 懐かしいだろうなぁ!」
さすがにこの展開は予測していなかったのか、巫女の顔に驚愕が浮かび、距離をとろうとするが。
「≪捕食封印≫!」
「≪送還≫」
ゴブニュート・シーラーの捕食封印が発動し、巫女を捕らえる。
巫女は抵抗する間も無く、シーラーに食われ、消えた。
俺はおそらくも何もシーラーより格上だろう巫女を食った悪影響が出る前に、シーラーをカードに戻す。
ここまでをほんの数秒の間に済ませた俺は、カードに戻したシーラーの確認をすぐに行う。
『ゴブニュート・シーラー+10』:モンスター:☆☆☆☆:小:10日
ゴブニュート・シーラーを1体召喚する。シーラーは封印魔法を専門とする、魔法職である。
現在使用可能なのは、『捕食封印魔法』のみである。捕食封印に特化しており、この魔法に限り、格上すら封印してみせる。
現在、大蛇の巫女を封印中。現在0%。
よし!!
新しい封印魔法の研究をしている万能型の錬と違い、捕食封印に能力を全振りしたシーラーは、見事に巫女を封印してみせた。
巫女との格の差がどの程度かは知らないが、これで一つ目の問題をクリアした。
同じレベルのシーラーを複数用意するには時間が足りなかったが、なんとか1人だけ用意できたんだよね。
魔力コストの都合で進化までは進めなかったけど、これなら大金星と言っていい。
「ご主人様!!」
「創様!!」
おもわずガッツポーズをしそうになった俺だが、周りはまだ戦闘が続いている。
周囲から、俺に声がかかった。
俺は喜ぶのを後に、すぐに気を引き締めて周囲に目をやる。
そして、愕然とした。
「「「うふふ。無駄な努力、ご苦労様でした」」」
みんなの戦っていたワクチン・オークが、封印したはずの巫女の姿になっていたのだ。
「「「私を一人封印しただけであんなに喜んで。可愛いわねぇ」」」
……そうか。
蛇の脱皮をネタにした、疑似転生のような復活だとばかり思っていたが、そっちのパターンかよ。
巫女は復活していたんじゃない。
記憶を共有する複数の体を持つ、群体のような生態だったのだ。
復活など、していなかった訳だ。
「「「手の内や切り札は、すぐには見せないものなのよ」」」
巫女の嘲笑が辺りに響き渡った。