26-17 迎撃戦①
今出来ることをすべて終えた。
そして翌日、黄泉比良坂攻略戦が始まった。
俺は指定された軍団の配置を行い、用意された方法で魔法を使い、出すべき結果を出した。
全ては予定調和のうちに終わり、ここから先は夏鈴と仲間達に任せることになる。
「じゃあ、任せた」
「はい、任せれました」
俺はオーディンに乗ると、春華らと共に逃亡を開始した。
「ご主人様」
「ま、相手にもカードクリエイターがいたなら予測されるよな」
事前に、逃走ルートには兵を配置しておいた。
魔法を使った場所から近いところだけだが、最低限の安全を確保しておくためだ。
戦闘能力よりも索敵と隠密に優れた者達だが、そのいくつかの反応が消えていくのが分かった。春華も敵のオーラのようなものを察知したのか、その接近に気が付いている。
こちらの逃走を予め想定して、追っ手を用意していたようだ。
「逃げ切るのは可能だけど、迎え撃つよ」
「ええ、お任せください」
この場合、逃げ切ったところで安心はできない。
敵がこちらの移動の跡を調べ、戦力を整えて襲ってくるかもしれないからだ。
ならば、ここで迎え撃ち、後顧の憂いを絶つべきだろう。
「追加の戦力、反応はありそうか?」
「敵に未知のカードクリエイターがいた場合、反応が無くても追加されますよ」
「そうだったな。清音と美星だけとは限らないからな」
巫女はカードクリエイターではないと思う。
だが、他にカードクリエイターがいないとは言い切れない。出雲の専任カードクリエイターがいたとしてもおかしくはないのだ。
その事を指摘され、俺は苦笑した。
そんな俺に対し春華は微笑み、大丈夫だと太鼓判を押す。
「勝てるかどうかは知りませんが、ご主人様だけは必ずお守りしますよ。
夏鈴さんがここに気が付くような、音の大きな魔法をお願いします」
「ああ、信用してるよ」
敵の能力は未知数で、読みきれるものではない。
ただ、この場所は仲間の近くであり、オーディン達ほど足が早くないのですぐには駆け付けられないが、夏鈴たちだって応援を寄越してくれるだろう。もしかしたら、もう応援を走らせているかもしれない。
ここは逃げるよりも、戦う方が確実のはず。
春華だって俺の判断に異を唱えず追従しているので、大きな判断ミスではないだろう。
勝てない可能性を指摘しながらも、俺を安心させるように余裕を見せる。
ならば俺は仲間を信頼して、勝って生き残ることだけを考えよう。
俺たちはオーディンらの背から降りて、戦闘準備を始めるのだった。