26-16 黄泉比良坂攻略戦・前日
現地までは、オーディン達に乗って、地上を移動した。
飛行船を使った場合、降りるための空港がないと、普通に降りられないからだ。
電話などもそうだが、飛行船も自分だけが持っていても意味がないものの同類である。
現状は出雲の国と没交渉なので、今後も出雲の国に行くのに飛行船は使わないだろう。
使うとしても、近隣の国まで、残りは陸路である。
現地についたら、まずは調査隊と合流した。
そして情報のすり合わせである。
「では、ここから撃てばいいんだな?」
「はい。ここから、こちらのガイドに向けて撃っていただければ、敵の被害は最大になります」
敵は周辺を警戒しているが積極的に打って出てくる事がない。そして近付かなければあまり動かないようだ。
ゴーレムは分かるが、人間らしき敵も同じようで、敵が真っ当な人間ではなく、人間モドキというのが予測された。
ドールだと寝食が必要なはずだけど――何か絡繰があるのかな?
とりあえず、敵があまり動かないのは都合がいい。狙って魔法を撃つだけでいいのは助かる。
この魔法は山をもぶち抜けるため、山を挟んで撃てば敵にいきなり襲われることもないが、それだと狙いが付けにくい。
また、門の役割をしていた大岩を破壊すると、門が閉まらなくなる恐れがある。
強力な攻撃をするのはいいのだが。不必要な破壊をしてはいけないので、ちゃんと狙いをつけて、求めた結果だけ出せるように意識しないといけない。
大威力はいいけど、制御可能な威力でなくてはいけないのだ。
効果的な先制攻撃として、「求められる以上の結果を」などと欲を出さず、きっちり求められた結果を出すような職人芸を目指すとしよう。
無駄に色気を出して、夏鈴の戦略が破綻したら元も子もないからね。
俺はそうやって先制攻撃の下準備と、魔法を撃った後の逃亡ルートの確認をする。
移動ルートは複数を想定し、戦場から最低10㎞は離れる。
ルートの指定をしておけば、いざという時に夏鈴も対応しやすくなるので、ルートの設定と予測不可能な危険が発生したときの対応は春華らと協議しておく。
夏鈴は夏鈴で、周辺の地形の確認と、兵の配置の最終決定をしている。地形の情報は事前に貰っていたが、やっぱり現地で見ないと分からないこともあり、細かいところで修正が必要になったのだ。
他の仲間も慌ただしく仕事をしていて、否が応にも気合いが入る。……俺の出番は、最初だけだが。
いや、最初が肝心と言うし、これで敵の数を大きく削ればいいだけなので、大切な役割なんだけどね。
「怪我をした者はこちらに下げて回復を――」
出来ることはあっても、やっちゃいけない。
敵のバックアタックを警戒するのは基本中の基本。
うん、我慢の一手だ。