26-15 開戦前
準備はまだ完璧とは言い難いが、2ヶ月が過ぎようとしている。
予定された、戦いの日が来ようとしている。
現地からは、敵の数が相当増えている様子が報告され、監視を始めてから、既に倍以上になったと報告を受けている。
このまま敵の数が増えると手に終えなくなる可能性が高く、戦力が整っていなくとも今のうちにどうにかしないと不味いという判断をした。
今回、俺が現地入りして軍を展開し、先制攻撃をする予定だ。
その後、空爆で敵の数を間引いて、軍で残敵を掃討するという流れだ。
俺は『バーストストリーム』を二発撃ったら撤収し、あとは仲間に任せることになっている。
以前の越前攻略戦と同じで、不要なリスクは背負わない。
下手に戦場に居れば邪魔になるだけなので、当たり前の判断だ。春華と親衛隊を連れて後方にいるのが、仲間に対し最大の支援となる。
ゲームで言えば軍の弱点、攻撃されたら終わる急所なので、戦場という盤面から盤外に逃げることで仲間のリソースをフルに活用できる環境を作るのだ。
俺が春華、親衛隊、オーディン、大狼の群一つを率いて退くので、カード4枚分の戦力を下げるわけだが、それでも戦場に俺がいない方がマシなのである。
自分で言っていて、かなり泣ける話だよな。
「御身に何かあった場合、私はこの首を差し出す他ありません。何卒、格別の配慮をお願いします」
「知ってる。なんの戦う力も無い奴が戦場に立つことほど仲間を追い詰める事はないって、創作小説では常識だからね。俺は、そんな馬鹿はしないよ」
古いアニメの記憶だが、「アベルー!」と言っては敵の前に姿を見せて、あっさり捕まるヘイト系ヒロインがいたのだ。
ヒロインの行動は感情任せ。なんの勝算、合理的理由もないその行動のせいで仲間がピンチに陥るのを見て、なんて馬鹿なんだろうと、子供ながらに思ったものだ。
まともに情報を掴めない中で、ただじっと待つのは辛い。
だが、そこで私心を押さえつけて待つことこそ、仲間のためになる。仲間を信じることが大切なのだ。個人的な感情論で仲間を窮地に追いやれば、俺は俺を許せないだろう。
何もしないことで仲間の窮地を見過ごすかもしれない。そんなことを言うやつもいるだろうが、何が出来るか考えもせずに動きだし、結果を出すのはご都合主義の世界に生きる主人公様だけだ。
そんな夢は見ずに、堅実に考え、現実を歩く。
それが俺の生きる道だ。