26-14 切り札の魔法
あまりの威力に出番がなくて、懐かしいとすら言える『バーストストリーム』を新しく2枚、用意してみた。
2枚追加して3枚にしたのは、3枚を合成して『アルティメット・バーストストリーム』にするため……ではなくて、射程が1㎞もある超長距離攻撃用の魔法だからである。
山をもぶち抜くこの魔法を、先制攻撃に使うつもりだ。
未だ研究・開発段階で、量産不可能なロケット砲は主力となり得ないから、敵を削るための手段を、魔法に頼ることにした。
「大魔法3発と軍団を3つ用意するのと、どっちがいいか迷ったけどね。結局は魔法に決めたよ。
リキャストタイムはこっちの方が短いからね。まだ小回りが利く」
「戦力としての総合力は、軍の方が上ですけどね。補給と訓練、こちらの指揮系統を考えると、旦那様の魔法の方が使いやすいのは確かですね」
「……使えなくて、ゴメン」
魔法ということで、専門家の凛音もこの魔法を覚えるべく、頑張っていた。
だが、いかなる理由があったか走らないが、凛音は『バーストストリーム』を覚えられなかった。
おそらく、ジョブの格が足りないのだと思う。
この魔法を切り札として使うと決めたとき、凛音は分かりやすく落ち込んだ。
魔法の専門家として、悔しいのだろう。
でも、専門家だからといって何でも出来るわけでもないし、出来ないことがあるのは当たり前だと思うけどね。
補食封印とか、専門外に手を出せている時点で、かなりすごいと思うよ?
「そう言えば、補食封印以外の封印魔法の開発は……最近、確認していなかったなぁ」
「私、聞いてる。相手の全部を封印するのではなく、部分的に、魔力だけ封印できるようになったって聞いた」
「はー。そりゃ凄い。錬、ずいぶん頑張ったんだな」
そう言えばと、ここのところ放ったらかしにしていたゴブニュート・シーラーの錬。彼女の事を思い出した。
格上相手には使い勝手の悪い、補食封印の魔法。
錬にはこの魔法の先か、別の封印魔法を開発させていた。
魔法の開発は一朝一夕で出来るものではないし、時間がかかるだろうと考えていたので、予算と時間をほぼ無制限に与え、そのままにしていた。
あんまり進捗とか中間結果とかを確認しない方がいいだろうと思っていたが……うん、忘れていた。
一回か二回だけ確認したけど、その後はなにもしてないな。
凛音は、そんな俺に替わって錬の面倒を見てくれていたようだ。
新しい魔法に興味があったという理由もありそうだが、とても助かる。気が利くね。
「連れていく?」
「連れていこうか。出番がありそうだし」
どうせだからと、錬も今回の攻略戦に参加を決定。
相手の魔力を多少なりとも削れるなら、かなり便利だろう。
詳しく聞いてみたが、事前準備の類いも要らないようなので、連発できないぐらいしか欠陥のない、使い勝手のいい魔法のようだ。
これは、本当に期待できる。
こうやって手札が増えていくと、どんな困難でもなんとかなりそうに思えてくるね。
いや、なんとかなりそうではなく、なんとかするんだけどね。