26-12 清音の気付き
より高性能な爆弾ではなく、より品質の高い爆弾を。
100発落とせば100回爆発する、そんな爆弾が「最低限」と考えている。
威力などは、その後に考えればいい。
まずは高品質な品を作れるようになることが重要なのである。
そんな爆弾を求めていると説明しているので、清音は俺の希望を叶えるべく、いろいろと試しているようだ。
「問題は、運搬時の振動なのですよね。振動で爆発はしないけれど、落下の衝撃では必ず爆発する。この閾値をどうやって設定するかが難しくて。
今のところ、他の爆発による連鎖を上手く使えないかと考えている所ですね」
「過熱による誘爆か。まぁ、そちらの方が事故は少なくなる、のかな?」
「これはこれで問題がありますが、「不発弾が発生しないようにする」という目的には合致するので、改めて研究を進めている所ですね。
最近は、物理的衝撃には非常に強く、熱伝導に優れた素材を使用して、爆破装置を追加しています。
カード進化を使った錬金術で作った新素材なんですよ。『サーベラス鋼』と名付けたんです」
清音は自身の成果を自慢するように、1枚のカードを取り出す。
『サーベラス鋼』:アイテム:☆☆☆:やや小:1日
サーベラス鋼は、地獄の業火によって鍛えられた金属である。非常に高い強度を誇る半面、冷却には弱い。
なるほど。
なかなか変わった金属ができたようである。
熱を通す性質があるので熔けるまで熱する事が難しく、事前に一度凍らせる必要があるとか、何気にファンタジーな金属であった。
俺の知る限り、ルーンメタルに次ぐ、2種類目の魔法金属である。
……どうやって作った?
ルーンメタル系統の金属だって、タイラントボアの骨を必要としたのに。
「普通に、強化していけば作れますよ? 元はただの鋼ですね。魔力を帯びるようにして、強度と、熱の通りを良くする効果を付けました。
これまでできなかったのですか?
……おそらくですけれど、強化の順番が問題だったのでは? 魔力を帯びるようにしないと、同じものが出来上がりません。組み合わせもそうですが、順番も大事ですよ」
「順番」
「はい。順番です」
俺は一瞬、遠い目をする。
清音は、こちらに来るまで、カードの強化に対する知識が乏しかった。カードに魔力を与え、素早く強化していく方法を知らなかったぐらいだ。
だが、その清音にカードの事を教わっている。
引き取ってから半年も経っていないような娘に。
強化の組み合わせは、色々と試した。
だが、順番にまでは意識を向けていなかった。
順番が適当でもどうにかなるものもあったため、順番が重要になるカードに気が付けなかったのだ。
そういえば、『ゾアン』という、ゴブニュートとカーバンクルを合成した種族の娘がいたよな。
アレは偶発的な出来事で、再現性が無かった。
もしかしたらも何も、彼女の言う「順番」がキーだった可能性がある。
あの後試したカーバンクルなどは、違う順番で強化していったから、合成できなかったのかもしれない。
まったく。
ほんの2人、カードクリエイターが増えただけで、いきなり新しい発見があったよ。
1人ではダメだって事だよな。
これでもう少しカードクリエイターの数が増えれば……意見が割れて、戦争になるだけか。
人間って、大体そんなものだしな。
やっぱり今ぐらいのままでいいか。
ちょっと上手くいったからといって、高望みはしないように気を付けないとね。